『ギジンカ』 作:伊佐場 武 CAST アキラ : 神 : 【擬人】 擬人男(ベンさん): 擬人女: 母  : 【妄想擬人】 ネコ : 花  : 活字 : マンガ: 弁護士: 【走馬灯の人物】 マナブ: ケイコ:  その他 ―風の吹きすさぶ早朝のビルの屋上 ―舞台中央奥に一段高い踊り場のような場所がある。 (周りを階段状にして、登れるようにしてあるとよい) ―その踊り場に、アキラ、客席を背にして立っている。 ―アキラは両手で遺書を持ち、祈るようにしている。 ―やがて遺書を下におき、客席側に向き直る。 アキラ (下を見て一瞬ひるむが)生きていたって何もいいことない。仲のいい友達もいないし、そもそもオレ自身、世の中の役に立っているとは思えない。俺なんて、生きてたってしょうがないし、居なくたって何も変わりはしないんだ。…生まれ変わったら、もっといい人生歩みたいなぁ…。よし、いくか! ―アキラ、目を瞑り、両手を広げ、踊り場から舞台へ飛び降りる ―照明、エフェクト ―アキラ、走馬灯のようなものが見える (思い出す際に、該当人物と思われる人間がアキラの前を横切る) アキラ これが走馬灯ってヤツか…、ああ、色々思い出してきた…。近所のマナブ!小学校のころはよく一緒に遊んだよなぁ…。初恋の相手のケイコ!そういえば去年結婚したって聞いたな…。そして長いヒゲの怪しい老人!…お前は…お前は?え?お前誰?? ―走馬灯に紛れて、ヒゲ老人(神)登場 ―照明、エフェクト止まる 神   (アキラよく見て)あ、なんだ飛び降りちゃったの?早まったことしたなぁ…     まだ若いのに。 アキラ ん?え?本当に誰?走馬灯なのに、思い出せないんだけど。 神   走馬灯じゃないよ。ホラもうさっきまでのキラキラっていうの止まってんじゃん。 アキラ え?あ、本当だ!ていうか、あれ?俺、浮いてる?? 神   んー。浮いてるってのとはちょっと違うんだなぁ。そう、この…何ていうかな?みんなが動きを止めて、でも自分だけは動けるんだけど、都合よく、空気の流れとかは止まらないから、生命活動には支障がなくって、その理由が、自分が触れているものに対してはその効果が発生しないんだけど、重力とかは、いい感じに発生したりしなかったりするというご都合主義的な…。 アキラ 何?何?もうちょっとわかりやすく説明してくんない? 神   うん、まあ、簡単に言うと、時間を止めたってこと。 アキラ わかりやすっ!ていうか最初っからそれでいいじゃん、何難しげに説明しようとしてんの? 神   最近はそういう細かいところツッコんでくる輩が多いのよ。 アキラ まぁいいや、それでアンタ誰?? 神   俺?神様だけど。 アキラ …神…様…? 神   うん、神様。 アキラ …。 神   …。 アキラ いやいやいや、おかしいだろ!? 神   おかしくないよ。だって、本当だもん。 アキラ おかしいって、絶対。 神   だって時間止めてんだよ、この時点でもう神様じゃん。 アキラ あ、ホラ、また。 神   いや、じゃあ、何やったら信じるのさ。 アキラ 信じる信じないじゃなくて、おかしいんだって。 神   何がおかしいんだよ。 アキラ だって、自分で神様って。いや、俺達は言うよ、神様って。自分のことじゃないんだから、そりゃ様付けで言うよ。でも、あなた神様でしょ?なのに自己紹介で自分のこと様付けで紹介するっておかしくね?日本語的に。 神   …。 アキラ …。 神   え?そっち? アキラ 何が? 神   俺が神だってことを疑ってんじゃなくて、様付けしてることがおかしいってこと? アキラ だからそうだって言ってんじゃん。 神   いやいや、神の部分は疑わないの? アキラ だって時間止めたりしてんじゃん、そこは信じるよ。 神   えー。 アキラ 何だよ、信じないほうがいいのか? 神   いえ、そこは信じてもらったほうが、こっちとしてはスムーズで助かります。 アキラ それでその、神様が俺に何の用なのさ。 神   ああ、そうだったそうだった。君、今もう、飛び降りちゃったけどさ、何で死のうと思ったわけ? アキラ なんかさぁ、生きてたっていいことないなぁって思って。まぁ、いいことないだけならまだいいんだけど。生きてて役に立ってんのかな?とか思うと、なんかもう自分が、「生きてるだけ」の無駄な存在なんじゃないのかな?って気がしちゃってさ。 神   ふむ、生きる価値がない、と? アキラ そうそう、そんな感じ。 神   でも、それはほんとかな? アキラ そうだよ、ここ何年も、人に感謝されたり、役にたったなぁ、と感じたことなんかなかったもん。 神   なるほど、しかし視点を変えてみると、違った世界が見えてくるかもしれないよ? アキラ 視点を…、変える? ―神、なにやらゴソゴソと探す 神   ええっと…、どこやったかな?…ん?あ。ああ、あったあった…あ、違うわコレ。こっちか?…えと、コレも違う。 アキラ 何やってんの? 神   ちょっと今話しかけないで!…ええと、(アキラに)この杖持っててくんない。…あ、ああ、あった。今度こそあった。 ―神、靴の中敷の下から、くしゃくしゃになった紙を取り出す。 神   えっと、一旦杖返してもらって…(取り戻す)。で、この紙をキミのズボンのポッケに入れて。 アキラ え?やだよ、そんな、靴の中に入っててくしゃくしゃになったのなんか。 神   大丈夫だよ、俺、神だから。 アキラ ああ、そっか。…てなるわけないだろ!その理由でどうしてイケルとふんだんだよ! 神   君たちの世界にはこんな言葉があるだろう?     『やってみせ 言って聞かせて させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ』 アキラ え?どういうこと? 神   だから、まず自分でやって、説明して、そして一度やらせて、良かった部分を     褒めてあげないと、人に何かをやらせることはできないんだよ。っていうこと。 アキラ 完全に使いどころ間違ってんじゃねぇかよ! 神   そうか?(紙を靴に戻し)やってみせ、(紙をキミのポケットに入れるんだよのジェスチャーで)言って聞かせて、(そのままぽっけに何食わぬ顔で入れ)させてみせ、「イイネ!」褒めてやらねば…。 アキラ いや、ちょっとおかしい。最後の「イイネ!」もおかしいけど、何か全体的におかしい。しかもしれっと、紙入れやがったし。 神   キミに今から…ちょっと、紙取んないで、それ意外と重要だから、ないと後で困るから。 アキラ ええー。だってー。 神   一回入れたんだから一緒だって。それにすぐ終わるから。 アキラ 分かったよ…。(渋々ポケットに戻す) 神   では改めて…。キミに今から、擬人化の力を与えよう! アキラ ギジンカの力? 神   そう、この力を使えば、キミが話してみたいなー、と思った身の回りのありとあらゆるものを人の姿に変え、コミュニケーションをとることが可能となるのだ。 アキラ へぇー、すごいなそれ。 神   この力を使って、今一度、自分の身の回りを振り返ってみるが良い。そしてその結果、何かを感じることができたならば、再びここで会おう。では行くぞ!ギージーンーカー!! アキラ え?う、うわぁ〜…。 ―神、杖を振りかざし、アキラを狙い打つ。 ―直後、目潰し。そして力を授けるようなSE、時空を超えるようなSEが入り混じる。 ―目潰し後、ゆっくり暗転 ―時間経過、ビルの屋上、昼間の明かり ―中央踊り場までの階段の部分に腰を掛け、気を失っているアキラ ―程なく目を覚ますアキラ アキラ はっ!(あたりを見渡す)…なんだ夢か…、そうだよな、あんなことあるワケないよな、ハハハ…。 ―アキラ、立ち上がり、何気なくズボンのポケットに手を入れる。 ―すると、何かが入っていることに気付く。 ―アキラ、恐る恐るゆっくりとポケットの中身を取り出す。 ―ポケットの中から、先ほどのくしゃくしゃの紙出てくる。 アキラ うわっ! ―思わず投げ捨て、飛び退き、物陰に身を隠すアキラ アキラ …落ち着け…、まず、確認だ…。もしかしたら、元々ポケットに入ってたレシートか何かかもしれないし…。 ―アキラ、徐々に近づき、恐る恐る紙を拾い上げ、紙を見る。 ―その後、頭を傾げながら紙を拡げる。 アキラ 「ヘルプボタン」?…なんだこれ?…まさか、な…。 ―アキラ、ボタン部分を押す、するとそれっぽい音と共に踊り場に神登場 神   はいはーい、何?もう行き詰った? アキラ あ、神様。 神   はい、神様です。何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ あ!また様付けしやがったな!まぁいいや、あのさ、今のこの状況…。 神   何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ だからさ、今のこの…。 神   何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ 何だ…? 神   何かわかんないことあったら聞いてね? アキラ …まさか…!? ―アキラ、神に近づきビンタ 神   痛てっ!! アキラ (触れてない体で)間違いない!立体映像だ!! 神   いや、当たった当たった。痛かったよ。 アキラ ん?何だ? 神   何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ そうか、つまり与えられた擬人化の力に関する質問しか受け付けないわけだ。    …そうだな、まずはこの力の使い方を聞いてみるか…。それじゃ、擬人化の力の使い方を教えてくれ。 神   え?そこから?仕方ないなぁ。まず両手の掌側の手首同士をくっつけて、 アキラ こ、こうかな? 神   うん、そんな感じ。その状態で右の腰のあたりに構える。 アキラ 構える。で? 神   足は左足を前、右足を後ろにしてに、肩幅程度に開き、腰を落とす。 アキラ こうか。 神   いいねぇ…、で、擬人化したい対象物を見つけたら、そいつに向かって「ギジンカー」と叫びながら、組み合わせたままの両手を相手に向ける。 アキラ 「ギジンカー」!こ、これって。 神   そう、ぶっちゃけカメハメ波の要領でやってくれればいいから。 アキラ ぶっちゃけすぎだろ!ていうか先にそれを言えよ、随分無駄な時間をすごしたよ。 神   じゃ、また何かあったら呼んでね。 ―神、去る ―と、そこにノラネコが出てくる。 アキラ なるほどー、…ん?なんだノラネコか…はっ!ねこ!?もしかしてコイツを擬人化させたら…。 ―アキラの妄想 ―踊り場にネコ耳を付けたネコ登場 ネコ  迷子ににゃっちゃったにゃん♪私のご主人様になってくれますかにゃん♪ アキラ おほー!こいつはけしからん能力をいただいたぜ!待ってろオレの子猫ちゃん!ギジンカー!! ―アキラ、ノラネコに向けて擬人化の力を放つ ―目潰しと爆発音(擬人化エフェクト) ―ノラネコはけて、擬人化ネコ登場 ―ただし出てきたのは妄想の擬人女ネコではなく、擬人男(ベンさん)による擬人化ネコ ベン  えーと、(メモ見て棒読み)迷子ににゃっちゃったにゃん…、私のご主人様になってくれますかにゃん…。 アキラ チェンジだー! ベン  何だよ、言われたとおりの台詞いったじゃねぇか! アキラ それ以前の問題だろ!オレはこういう(踊り場の擬人女連れてきて)、な?    分かるだろう?こういう男の夢的な擬人化を望んでいたのにぜんっぜん違うじゃねぇか!お前みたいなヤツが出てきて、いったい誰得なんだよ! ベン  あー、はいはい、その件ね。いるんだよねー、安易になんでもかんでも擬人化させちゃうやつ。 アキラ え?だめなの? ベン  ダメだよ。あのね、擬人化にもルールがあるんだよ。 アキラ ルール? ベン  そ、ルール。まぁ詳しいことは神のほうが詳しいから、ヤツにでも聞いて。とりあえずオレ、帰っていい? アキラ あ、ああ。悪かったな。 ―ベンさん、ネコ女と肩を組んでハケる。 ―ノラネコ、再登場 アキラ 俺の妄想と肩を組んで帰るっていう、あそこらへんのシステムはどうなってんだろうな?…まぁいいや。えーと、ヘルプボタン。ぽちっ。 ―神、出てくる 神   え?何?また?早くね? アキラ あのさ…。 神   あ!ちょっと待って。アー、アー、コホン。何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ 今のクダリ必要か? 神   何か分かんないことあったら聞いてね? アキラ ああ、えーと、擬人化のルールを教えて。 神   えー、めんどくさいから、特にありません。じゃ、また何かあったら呼んで。 ―神、帰ろうとするが、アキラ、飛び蹴り 神   ぐぇっ! アキラ くそっ!立体映像だから効かないっ! 神   いや、ゴメン。もうその設定やめよう。ちゃんと説明するから。えーとね、擬人化のルールだよね。とりあえず、何でもかんでも擬人化はできるんだけど、まぁ、そのランク付けっていうかね、思ったとおりの擬人化ができるかどうかは、自分と、擬人化しようっていう相手との関係性が大きく関わってくんのよ。 アキラ それお前、先に言えよ!カワイイ女の子になるのかと思ってドキドキしながらノラネコ擬人化したのに、イカツイおっさん出てきてびっくりしたよ。何の摩訶不思議アドベンチャーだよ! 神   ああ、ベンさん出てきたの?それ逆にラッキーだよ、ベンさんはなかなか出てこないレアキャラなんだから。 アキラ そうなの?でもそっちの事情なんか果てしなくどうでもいいから。ベンさん求めてないから。…関わりか…、あ、偶然ポケットにぺディグリーチャムが!ほれ、ネコまっしぐれ、まっしぐってこい! ―ノラネコ、ペディグリーに寄ってくる。 アキラ よーしよしよし…、ギジンカー! ―擬人化エフェクト、出てくるベンさん アキラ 何でだよ! 神   ネコ缶一個じゃムリだろ。 アキラ ペディグリーはドッグフードだけどな。 神   余計にダメじゃん。 ベン  この程度で望みが叶うと思ったら大間違いだ! アキラ ぺディグリーなのに? 神   種類の問題じゃない。ていうかドッグフードなんでしょ? アキラ だって神様へのお賽銭なんて五円が相場じゃんか、ご縁がありますようにとか言ってさ。そう考えたらぺディグリーだってたいしたもんだよ。 神   あんなのどっかの神主が考えたオヤジギャグだよ、真に受けんな!つうかさ、だから金額とかそういうこと言ってんじゃないんだよ。長い間お世話しましたー、とか。関わりあいの深さが重要なの。そうじゃないとずっとベンさんだからね。 アキラ ずっとベンさんはイヤだなぁ…。 ベン  あれ?オレってハズレ扱いでしたっけ?つーか俺、帰っていいかな? アキラ ん?あ、ああ。…自分と関わりのあるものか…、そういうの擬人化させりゃいいんだな? 神   ていうか、そのために与えた力だしね。あれ?分かってるよね?キミの萌え欲求を満たすために与えた力じゃないよ? アキラ そうだなぁ…、あ!そうだ、アパートの前の花壇! ―アキラ、走り去る 神   あの男のアパート前になぁれー。 ―神、杖を振りかざすと、マジカルなSEがかかる。(ベンさん去る) ―神、地道に花壇らしきものを持ってきて場転。 ―場転終了後、神、去る。 ―アキラ、息切らして登場 アキラ よし、着いた。あの花壇、週一回だけだけれど、花の水遣りをしていたし、たまに草むしりもしていたからな。さっきのノラネコよりは関わりがあるはずだ!花の擬人化っていうとやっぱり…。 ―アキラの妄想 ―踊り場に花飾りをつけた花登場 花   コスモスは帽子に似合う、タンポポはお昼寝枕、アカシアのアーチを抜けて、歩いて行きましょう。 ―花、ひとしきりしゃべって、歩いて去る アキラ おお!遂にオレの住む町に来るかもしれません!ギジンカー! ―擬人化エフェクト ―BGM「花の子ルンルン」OP ―歌詞が始まるタイミングで曲C.O ―花飾りを付け、花をマイクに見立てて持ってきたベンさん登場 ベン  ♪幸せをもたらすと言われてる、どこかでひっそり咲いている、花を探して、花を探しています〜。(ちょっと音ハズれてる感じがちょうどいい) アキラ ここにはねぇよ!次の町にさっさと渡れ! ベン  どうも、いつもお世話になってます。 アキラ 何でまたベンさんなんだよ!週一回、世話してたじゃん! ベン  いや、すいません。今日は担当の子がどうしても抜けられない用事ができたようなそうでもなかったような…そんな感じで、まぁとにかく来れなくなったんで、代わりにオレがやってきたというわけです。 アキラ そっちサイドの都合なんか知るか!ていうか用事、もうちょっとハッキリさせろよ!何だよその、バイトのシフトを別の人に代わってもらいました、みたいな感じは! ベン  プライベートには立ち入らないのがこの業界の掟なんで…。 アキラ どこのワケあり労働者だ!今回ちょっと自信あったのに…、せめて代役も女の子にしろよ! ベン  まあそう言わないでください。ほら、よく見てください。何か気づきませんか? アキラ 何だよ。 ベン  もっとよく見て、ホラ! アキラ …いや、…できればあんまり見たくない。 ベン  実はこの目の周り、ラメ入れてみました。 アキラ 何やってんだ気色悪い! ベン  いや、女の子希望だったんで、できるだけ女の子っぽく仕上げようと思って…。 アキラ 女の子と女の子っぽくしたオッサンとじゃ、はるな愛とミッツマングローブぐらい違うだろうが! ベン  いや、それ両方オッサン…。 アキラ ていうか、あれ? ベン  どうしました? アキラ なんか違くね?さっきと。 ベン  何がですか? アキラ お前だよ、お前。 ベン  あ、目の周り?ラメ入れたんですよ。 アキラ それじゃねぇよ!それだったらわざわざ指摘しねぇだろ。そうじゃなくてお前の接し方だよ。さっきはぶっきらぼうな感じだったのに。 ベン  これが関係性の違いってヤツです。今回担当の子が来れなかったのは残念ですが、きちんと気持ちは預かっておりますのでご安心ください。 アキラ なるほど、女の子じゃなかったのは残念だけど、元々の趣旨はコミュニケーションだからな。まぁいいか。 ベン  それでは、今までの思いを手紙にしたためましたので。 アキラ 手紙? ―BGM「過ぎ去りし永遠の日々(Coba)」 ベン  『あなたとはじめて会ったのは5年前、あなたがこのアパートに引っ越してきた日のことでした。管理人さんから、週一回、花壇の水遣りをするのが新入りの仕事だと、と言われ、疑いもせずに始め、その後、人の入れ替えがあったにも関わらず、あなたは他の人に押し付けることなく、私たちへの水遣りを続けてくれましたね。実はあの時の管理人さんの言葉は冗談だったのですが、純粋なあなたは信じきってしまい、管理人さんも本当のことが言い出せなくなってしまったそうです。でも、そんなあなたが居たからこそ、今では沢山の花を咲かせる花壇になったのだと思います。今までありがとう。そしてこれからも…。』(手紙畳む) アキラ 何だこの十六小節のラブソングは。 ベン  なぜ、他の人に当番代わらなかったんですか? アキラ いや…、元々、自分にとってはそれほどイヤな作業でもなかったし…、まぁでも他の連中にとっては面倒な作業だったんだろうな…。他の連中は、ほっとくとすぐサボるんだよ。最初のうちはちゃんと注意していたんだけど、注意するより自分でやっちまったほうが早いんじゃないか?ってなってさ。以来ずっと自分でやるようになってた。 ベン  でも、それで花壇が枯れたからって、あなたの責任になるわけではないじゃないですか。 アキラ そりゃそうだけど、言っただろう、イヤな作業だったワケじゃないって…、だから何となく続けてただけだよ。 ベン  それでも、私たちにとってはありがたかった…。 アキラ うん…、まぁ、そう言って貰えると、俺もやっててよかったなぁって思えるよ。 ベン  …他にも、色々あると思いますから…。 アキラ ん?何が? ベン  あなたがやってきたこと。 アキラ やってきたこと? ベン  役に立っていない、なんてこと、ありませんからね。 アキラ …。 ベン  これからもよろしくお願いしますね。それじゃ。 ―ベンさん、去る アキラ これからも、か。 ―暗転 ―花壇ハケ ―アキラの部屋 (部屋の一角に本棚、ちゃぶ台、ごみ箱と、他、何かが散らかっている程度で可) アキラ よぅし!気を取り直して、いろいろ擬人化させちまうぜぇ。オレの部屋のものなんだから、何かしらオレと関わりあるだろうし、ひとつぐらい当たりがあるだろうからな。…そうだな、やっぱり目に付くのはこの本棚だよな…、例えば小説とかだと、やっぱり眼鏡っ娘かぁ…? ―アキラ、本を確認しながらの妄想 ―踊り場に眼鏡をかけ、女子高生風の格好をし、ハードカバーの本を持った活字登場 活字  (眼鏡を直し)本は心の栄養です。 アキラ あ!でも活字は少ないしなぁ…、マンガ本だとやっぱ萌え系になるのかな? ―アキラ、引き続き本を確認しながらの妄想 ―踊り場にアニメキャラのような格好をし、コミケの分厚いカタログを持ったマンガ登場 マンガ 非実在青少年って何ですかぁ? アキラ あれ?六法全書なんかあったっけ? ―アキラ、更に続けて本を確認しながらの妄想 ―踊り場にスーツを着て、六法全書を持った弁護士登場 弁護士 異議あり! アキラ 迷うなぁ…、でもこういう時は選んじゃだめだ。目を瞑って、適当に狙って打って楽しむべきだろう…、なんていうとまた神様に怒られそうだな。まぁいいや!(目を瞑り)いくぞ!ギジンカー! ―擬人化エフェクト ―BGM「卒業」(斉藤由貴) (インストバージョン、後半のほうから) ―擬人女、女性用袴姿で登場(右手に賞状筒(マイク)、左手に卒業アルバム) ―妄想擬人、バックダンサー風になる アキラ さぁて、いったい誰が出てきたのかな?(目を開ける) 擬人女 ♪ああ 卒業式で〜泣かない〜と〜 冷たい人〜と言われそう〜 アキラ うわっ!突然強烈なヤツ出てきたな。誰だお前!! 擬人女 ♪でも も〜っと哀しい瞬間に〜涙はと〜って〜 おきたい〜の〜 アキラ イヤ、答えろよ!(賞状筒奪う、曲C.O.妄想擬人全員ハケ) 擬人女 わわっ、メガネメガネ…。(地面を這って探すフリ) アキラ メガネではない(返す) 擬人女 ありがとう。ふぅ…。♪制服の胸のボタンを〜 アキラ もういいよ!その歌よく知んないし。 擬人女 えぇっ!?…昭和生まれのクセに? アキラ すっげー古い人間風に言うな!誰に失礼って、斉藤由貴に対して一番失礼だろ! 擬人女 知ってんじゃん。この歌知ってんじゃん! アキラ いいから。で、お前誰? 擬人女 見ての通りです。 アキラ 分かんねーから聞いてんだよ! 擬人女 えぇっ!?…昭和生まれのクセに? アキラ 関係ねーだろ! 擬人女 まぁ関係ありませんけど…。 アキラ とっとと名乗れ! 擬人女 コレです(アルバムを示しているが、筒も持っているのでどっちか分からない) アキラ ?どっち?? 擬人女 コッチです。(分からない) アキラ 分かんねーっつってんだよ!ちゃんと言え! 擬人女 えぇっ! 二人  昭和生まれのクセに? アキラ 言うと思ったよ! 擬人女 私のネタ盗らないでください。ヒント。 アキラ ヒントとか要らないから。 擬人女 卒業と関係あります。 アキラ 全部だろ!コレ(アルバム)もコレ(筒)も、さっきの歌も、全部卒業と関係してるじゃねぇか! 擬人女 残念でしたー!コレ(筒)の中身は…、(一回り小さい筒出てくる)コレでしたー! アキラ マトリョーシカかよ!くだらないネタ仕込むな!…つーことは、そっちの卒業アルバムってことか…。 擬人女 はい。 アキラ なんか、ようやく女が出てきたのに、この嬉しくない感じはなんだろうか? 擬人女 多分、卒業以来一度も開いていないからじゃないですか? アキラ 卒業以来って…、ああ、中学の時のか…、見てねぇわ、確かにそれ。 擬人女 なぜ見ないのですか?見ればいいじゃないですか!さぁ! アキラ ちょ、やめてくれ…、中学の時は…。 擬人女 ?…何か、あったのですか? アキラ …いや別に…何でもねぇよ。 擬人女 本当に? アキラ 本当だよ、うるせーな。 擬人女 …。 アキラ …いい思い出がねぇんだよ、中学の時は…。 擬人女 やっぱり、何かあったんじゃないですか…、私でよかったら話し聞きますよ。 アキラ いいよ別に。話したところでどうなるもんでもない。 擬人女 そんなことないですよ、ちょっとは楽になれるかもしれませんから、ホラ。 アキラ …、全く身に覚えがないことについて、濡れ衣着せられて、根回しされて、総スカン。見事な連携プレーで、気がつけば針のムシロだったよ。 擬人女 …イジメ…ですか? アキラ クラスのほぼ全員に無視され、陰口を叩かれるというタイプのな。ま、暴力がなかっただけでもマシなほうかな? 擬人女 身に覚えがないのなら、言い返せばよかったじゃないですか アキラ どうやって? 擬人女 それは自分じゃないって。 アキラ ある日突然さ…。 擬人女 ?何ですか? アキラ ある日突然、「裏切り者」って言われたんだよ。 擬人女 いきなり、ですか? アキラ ああ、最初、誰に言ったのかすら分からなくて、でも、何人からも同じようなことをされてさすがに気が付いた、俺に言ってるんだって…、でも、何のことか分からないから抗議のしようがないだろ?で、しばらくしたある日、一人の男が俺に聞いてきたんだ。「あのことをバラしたのってお前なの?」ってね。 擬人女 あのこと? アキラ ああ、その時の担任がとにかく嫌われていて、一部のクラスメイトが、ある日そいつに嫌がらせしようって話になったんだよ。で、給食にゴミを混ぜるっていうことになり、実行した。 擬人女 ええっ! アキラ 担任は違和感がありながらも、ゴミが混入されたことには気付かなかったらしい。だけど後日、そのことを担任にチクったやつがいてバレた。 擬人女 その報告者があなたにされたってこと? アキラ どういう経緯でそうなったかは分からない。しかしクラスのヤツらには既に根回しがなされていて、おそらく3分の2以上はそのことを信じていた。そんな状況になってしまっている中で俺は聞かれたんだよ「あのことをバラしたのってお前なの?」ってね。 擬人女 …。 アキラ 俺はこの時、ようやく状況が繋がった、そして安心した。ここで否定すれば俺の疑いも晴れるだろうって。だが、そんな甘いものじゃなかった。 擬人女 信じてくれなかったんですか? アキラ この件で質問を投げかけられたのは、後にも先にもその一回だけ。きちんと否定はしたけれど焼け石に水。ま、考えてみりゃ分かるけどな。そんな状況に追い詰められていれば誰だって否定する。 擬人女 だったら、先生とかに相談すれば…。 アキラ そこがこの件の巧妙な部分さ。俺はこの時どんな疑いをかけられているんだ? 擬人女 担任に嫌がらせの内容を報告した…、あ! アキラ このことで先生に相談すれば、表面上は解決するかもしれない。でもヤツらの疑いは確信に変わる。それは親への相談でも同じだ。加えてクラスメイトへの根回しも終わっている。包囲網はすでに完成されていて、あとは俺の自爆を待つばかりって寸法さ。 擬人女 …結局、どうやって解決したんですか? アキラ 解決なんかしてねぇよ。 擬人女 え? アキラ 時期が時期だったからな。中学三年の二学期後半。受験でピリピリしている時期につまらねぇことやってたんだな?と今になったら思うけど、まぁ残り数ヶ月だから時間が過ぎれば勝手にみんなとオサラバできるって思ってたから我慢した。 擬人女 だったら、先生に相談して、表面上だけでも解決しておけばよかったじゃないですか。 アキラ 俺もそう思う。 擬人女 じゃあ何で…。 アキラ イジメってのはさ、それを受けたことのない人間が思っている以上にキツいんだよ。思考が混乱するほどにさ。俺はそこで真犯人が見つかったからといって、ターゲットが二人になるだけで、自分への風当たりは変わらないんじゃないか?って思ったんだ。相手が俺を信じない以上に、俺が周りを信じられなくなっていたんだろうな…。 擬人女 …。 アキラ だからさ、俺にとって中学の思い出に、いいことなんかない。そんな卒業アルバムなんか見たくもないんだよ。 擬人女 …そんな…そんなことないですよ。 アキラ そんなことあるよ、現に卒業してから一度も開いていないだろうが! 擬人女 じゃあ何で卒業アルバムを持ってきたんですか? アキラ …引越しの荷物に紛れていただけだ、深い意味なんかねぇよ…。 擬人女 ウソです! アキラ ウソじゃねぇよ。 擬人女 いいえ、ウソです。私はこのアルバムなんですよ?引越しの時にどうやって荷造りされたかなんて、分かっているに決まっているじゃないですか。 アキラ …。 擬人女 ようやく分かりました、引越しのとき、迷いながらも持ってくることに決めた理由。そしてたまに取り出して、表紙だけを見つめて、そのまま開かずに本棚に戻していた理由。 アキラ …理由なんか無ぇよ…。 擬人女 いつか、あの頃のようにみんなと笑いあいたい。あの、仲の良かった時間に戻りたい、そう願っていたんですね? アキラ 違う…。 擬人女 写真に秘められた想いまでは私には分かりません。でも、この卒業アルバムにはあなたとクラスメイトが笑い合っている写真がたくさん収められています。いい思い出がないなんてこと、ないじゃないですか。 アキラ やめろ…。 擬人女 記憶っていうのは美化されるものじゃないですか。だったらいい思い出だけ思い出して、辛かったことなんか忘れてしまえば、いつかまた、何事もなかったかのように笑い合える日が来ますよ。 アキラ やめろって言ってんだ!お前に何が分かる?いい思い出があったからこそ、最後のイジメが尚更キツいんだよ!…いい思い出だけ思い出せ?辛かったことなんか忘れろ?…ははは…イジメを受けたことのないヤツってのはそんな能天気な考え方なんだな?できるワケないだろう!!いい思い出を思い出そうとすると、つられてイジメの記憶も甦ってくるんだよ!…いいか、美化される記憶ってのは辛いながらも楽しいことがあった時だけなんだよ!ただひたすら辛いだけの記憶なんか美化されるワケがないだろう!…そうだ…オイ! 擬人女 な、なんですか…? アキラ ちょっとその卒業アルバム、見せてくれよ。 擬人女 え…、は、はい…。(渡す) アキラ (受け取る)…ふふふ…お前がいる状態で、この卒業アルバムを引き裂いたらどうなるんだろうな? 擬人女 …え…? アキラ ちょっと、試してみようか? 擬人女 や、やめて…。 アキラ ちょうど今、この卒業アルバム捨てようと思ったところだからさ、思い立ったが吉日だろ? 擬人女 やめてー! ―そこに、ゴキブリの格好をしたベンさん出てくる ベン  ハリケーンミキサー! ―ベン 、アキラに頭突きで突っ込み、突き飛ばす アキラ ん?どわっ!! ―反対側(アキラが突き飛ばされたほう)から、神、出てくる 神   ベルリンの赤い雨! ―神、そんなに速くないスピードのチョップを浴びせる アキラ ぐわー! ベン  マグネットパワー!プラス!! 神   マイナス!! 二人  クロスボンバー! ―神とベンさんのクロスボンバーが決まり、アキラ、倒れる 二人  ナンバーワーン!! ―暗転 ーアキラの部屋 ーアキラ、踊り場に寝ている ーその前でなにやら口論のようなことをしている神とベンさん ーちょっと離れた場所で見守っている擬人女 アキラ …う、う〜ん…。 神   やっぱ俺だろう?だって俺、神だし…。 ベン  関係ないじゃないですか。 アキラ (わざとらしく)ゲフン、ゲフフン! 神   昔からやりたかったんだよ。 ベン  でも立場から言ったら絶対私のほうが、こっちですよ。 アキラ あ、あのー…。 神   立場なんて関係ないだろう! ベン  立場の話を先にしたのは神様のほうじゃないですか! アキラ ちょ、ちょっと! 神   うるさい!もう決めた!俺がネプチューンマンだから! アキラ いや、何の話してんだよ! 神   ん?何? ベン  あれ?気がついたんですか? アキラ 結構前から目を覚ましてたよ!…つーか、あれ?…俺、何やってたんだっけ? 神   何やってたんだっけ?じゃないよ、まったく…。 擬人女 あー怖かった、怖かったー(棒) ベン  ルール違反です。 アキラ ルール違反て?…て、何だベンさん。何で居るの?何でそんな格好してんの? ベン  そんないっぺんに答えられません。 神   ちゃんと説明書に書いてあっただろう?擬人化してる間に対象物の破壊を行ってはいけません。って。 アキラ 説明書? 擬人女 怖かったよー(棒) ベン  ほら、あんなに怯えてる。 アキラ 明らかに棒読みじゃねぇか!ていうか説明書って何だよ! 神   最初に渡しただろう? アキラ あぁ(ヘルプボタン取り出して)これ? 神   それじゃなくて、薄い本みたいなやつ。 アキラ 薄い本とかいうな!え?そんなの渡されてたっけ? 擬人女 失くしたんじゃないのー? アキラ 失くすも何も、受け取った覚えないけど。 神   いや、だから(袖から取り出して)コレだよコレ! アキラ ん?…見覚えないなぁ…。 ベン  あれ?神様、それって何冊もあるんでしたっけ? 神   いや、これ一冊だけだよ。 アキラ じゃあ何でそれ持ってんの? 神   何でって、俺のじゃん。 擬人女 そうじゃなくて、神様がそれ持ってるってことは、渡してないってことですよね? 神   え?何言ってんの? ー間 神   …あ!そっかぁ。てへぺろ。 三人  おい! アキラ なめてんのか! ベン  さすがにそれはないでしょう。 擬人女 私なんかあやうく殺されかけたんだからね! アキラ 大体、何回かヘルプ使ってたじゃんか! ベン  その時普通気付くでしょ。 擬人女 私なんかあやうく殺されかけたんだからね! アキラ そもそも、ノラネコの時、一度ルールについて聞いたじゃねぇか! ベン  どうせ面倒くさがって説明省略したんでしょ? 擬人女 私なんかあやうく殺されかけたんだからね! 神   分かった、分かったから、やいのやいの言わないでくれよ!そんなことより問題はコイツの行動だろ? アキラ 重大なミスを「そんなこと」と言い切りやがったよ…。 ベン  最低な神様ですね。 擬人女 この最低神。 神   最低神はやめて、地味に傷つく。 ベン  で、何の話してたんでしたっけ? アキラ 何か、どっちがネプチューンマンをやるかとかいう話じゃなかったっけ? 神   あ!俺がネプチューンマンだかんな!ベンさんビッグ・ザ・ブドーだかんね! ベン  いや、正直今はそれ、どうでもいい話です。 神   どうでもいいとは何だ、俺の中では結構重要案件だぞ! 擬人女 そうじゃないでしょ、この男の行動について問い質そうとしてたんでしょうがこの最低神! 神   最低神はやめて、地味に傷つく。 ベン  それはもういいですから、話を先に進めましょう。 神   そうだな、で、何であんな行動したのさ。 アキラ あんな行動って? 擬人女 卒業アルバム破こうとしてたじゃない。 アキラ あ、あれか…。なんかさ、こいつ、うっとおしくなったから、卒業アルバム破いて、まいっちんぐな展開にしてやろうと思って。 ベン  まいっちんぐ、って? アキラ いや、その、着ている服がビリビリー、ってなるかなーって…。 擬人女 …サイテー。 神   そんなうらやまけしからん状態になるわけないだろう!ちゃんと説明書読んだのか? アキラ だからそれを貰ってなかったんだろうが! 神   あ…。 ベン  ていうことは、別にこの子、殺そうとしてたわけじゃないんですね? アキラ 何怖いこと言ってんだよ。…え?死ぬの? 擬人女 死ぬの。 アキラ 卒業アルバム破いたぐらいで。 擬人女 あのねぇ…、私は今、コレなんだよ?これが破られるということは、私自身が引き裂かれるということと同じことなの。分かる? アキラ うわ、何だよそのスプラッターな設定は。さすがにそれは引くわー、この最低神。 神   え?それも俺のせい? アキラ だってアンタが決めてんだろ?そういったルールや何やら…。 神   そりゃそうだけど…。 擬人女 ほんと、もうちょっとソフトな設定にしてほしいわよね。 ベン  だてに最低神の異名をもっていないですね。 神   そんな異名持ってねぇよ! アキラ つぅかベンさん、何でいるの? ベン  いや、実は卒業アルバムを擬人化した時にですね、たまたまゴキブリが卒業アルバムにくっついていたんです。で、一緒に擬人化された結果、この有様です。 アキラ え?ベンさん、今回ゴキブリなの? ベン  残念ながら…。 アキラ それにしちゃヤケに親しみやすいキャラじゃんか。 ベン  一応、同居人ということで、お世話になってましたから。 アキラ いや、積極的に世話してたわけじゃねぇけどな。 ベン  そこはホラ、互いの関係性ですから、こっちがお世話になってたと感じていれば、それだけで成立するんですよ。 アキラ ふーん、そんなもんかね? ベン  そんなもんです。 アキラ でも、何で今まで居なかったのさ。 擬人女 出るタイミング、失っちゃったんですって。 ベン  なんか二人で盛り上がってたみたいなんで、こんなゴキブリ野郎の出る幕ないな、と思いまして。 アキラ だったら帰ればよかったじゃんか。ゴキブリなんかと話すこと、何もねぇよ。 擬人女 あー、それダメなんだわ。 アキラ ダメって、何が? ベン  擬人化された以上、何も話さないで帰るってことできないんですよ。 アキラ またお前のせいか! 神   いや、これにはいろいろと理由があるんだよ。 アキラ どうせくだらない理由だろ! 神   いや、これは結構マジで。擬人連中ってわがままなヤツが多くてさ、最初のころは勝手に帰っちゃうやつが多くてクレームばっかりだったワケ。それなんで、きちんと相手の許可貰わないと帰っちゃダメだよ?っていうルールにしたの。 アキラ あ、だから最初の時、ベンさん、「帰っていい?」て聞いてたんだ。 ベン  はい、花壇の時は最初に「次の街にさっさと渡れー!」と言ってくれたのでいつでも帰れたんですけど、感謝の手紙預かってたから、これだけは読まなくちゃ、と思いまして。 アキラ なるほどなぁ…。 擬人女 だから私のことだって、「帰れー」とか言ってくれれば居なくなれたのに、帰れもしないし、殺されかけるしでもう散々だったわよ。 アキラ そうか、すまなかったな。 擬人女 え? アキラ いや、知らなかったとはいえ、酷いことをしてしまったからな。ごめん! 擬人女 い、いいわよ。別にもう、気にしてないし…。 アキラ そうか、ありがとう。 擬人女 …うん…。 アキラ ベンさんも、キミも、いつでも帰っていいから。 ベン  そうですか、では…。 擬人女 でも、まだ解決してないじゃない。 アキラ 中学の時のことか?そうだな、だけどここから先は俺の問題だろう? 神   何だ?やけに聞き分けがよくなっているじゃないか。 アキラ さっきはいろいろ畳み掛けられて、頭に血が上っちまってたからな。二人のクロスボンバーのおかげで冷静になることができたよ。 神   そいつはよかった。 アキラ もうちっと手加減してくれてもよかったんじゃないかって思うけどな。 ベン  す、すいません。 神   何言ってんだ、本気出してたらあんなもんじゃすまないぞ。 アキラ まぁ、今度、同窓会の誘いがあったら参加してみるよ。 擬人女 同窓会の誘いなんか来てたの? アキラ ああ、毎回な。どうせ俺を笑いものにするために誘ってるんだろうと思って一回も参加したことなかったけど、次、あったら参加してみる。で、そこでハッキリさせてみるよ。今さらどうこうできるとは思えないけどな。 ベン  それでも、先に進まないよりはマシですからね。 アキラ ああ、俺もそう思う。 擬人女 それじゃ、私の出番はもう終わりか…、たまには卒業アルバム開いてよね。 アキラ 分かった。 ベン  じゃあ僕も。ゴキブリと話すことないでしょうしね。 アキラ そうだな、毎回悪いな、ベンさん。 ベン  いえ、気にしてませんから。 アキラ じゃあな。 ベン  はい、それじゃ。 擬人女 ばいばい。 ーベンさん、擬人女去る 神   さて、みんなもいなくなったことだし…。 アキラ お前はまだ居るのかよ。 神   何かしらの結論が出たかな?と思ってさ。 アキラ いや、正直まだ…。 神   ええー、そろそろいい頃合かと思ってたのに。 アキラ でもなぁ…、生きてて仕方ない感じ、まだあるんだよなぁ…。 神   え!まだそんなこと言ってんの?しょうがないなぁ…。ムムムム、ホレ! ー神、何かしらの力で薄汚れたお守りを取り出す。 アキラ 何だそれ? ーアキラ、近づいてじっくり見て、やがて気付く アキラ お前、それ! 神   気がついたか? アキラ いつも俺が持ってるお守りじゃねぇか!あれ?(探す) 神   その通り、コレをこうする(袖に全力投球) アキラ てめー、何やってんだ! 神   待て!とっておきを見せてやるから!ギジンカー、改! アキラ 擬人化…改? ―擬人化エフェクト ―BGM「Dear Woman」(SMAP) ―歌詞が始まるタイミングで曲C.O ―母、軽快に踊りながら登場 母   ♪ウエルカム、ようこそ日本へ〜 アキラ ノリノリで出てくんな! 母   久しぶりだね、アキラ。 アキラ 誰だよ!…ん?…え?…もしかして…、オフクロ…? 母   ファイナルアンサー? アキラ 古いわ!ていうか、オフクロだよな? 母   うん…。アキラ…。大きくなったねぇ…。 アキラ あ、ああ…、でも…何で?? 神   これが擬人化、改の力だ。あのお守りはお前のオフクロさんがくれたものだろう?だからオフクロさんに変身したのさ。 アキラ ん?どういうこと? 神   だから、さっきまでの擬人化と違って、コレはゆかりある人物に変身させることができんの。 アキラ ああ、そういうことか…、でもオフクロ、5年前に死んでんだけど…。 神   これが神の奇跡というものさ。 アキラ 都合のいい奇跡だな。 母   そんなことより、聞いたよアンタ、自殺しようとしてるんだって? アキラ え? 神   必要な情報はあらかじめお伝えしてあります。 アキラ お前! 母   まったく…、バカな真似はおやめよ。 アキラ オフクロには…、関係ないだろう。 母   何言ってるんだい、死んじゃいるけどあたしゃ母親だよ、関係ないなんてことあるわけないじゃないか! アキラ 関係ないよ…だって、そんなこと言ったって…、オフクロ、もう、居ないじゃないか…。もう死んでいるオフクロに、生きている俺の辛さなんか分かるかよ! ー母、アキラに近づきビンタ アキラ 痛って…。 母   アキラ! アキラ 何だよ! 母   なんだか今の、母親っぽかったろ? アキラ はぁ!? 母   何か、親に反発する子供に、愛のムチって感じでさ。 アキラ いや、何かお説教とかされる流れじゃねぇのかよ! 母   よしとくれよ、母さん、柄にもないことしたくないタイプだから。お説教なんて偉そうこと、できやしないよ。 アキラ えー、自殺しようとしてんのに? 母   なんだい?本当は止めてほしいのかい? アキラ いや、そう言われると、なんて言ったらいいか…。 母   そうだよねぇ、覚悟決めて飛び降りたのに、今更止めてほしいなんて、言えないよねぇ。 アキラ うっせーな! 母   …だってさ、アンタの言う通りだもん。 アキラ 何がだよ。 母   生きているアンタの辛さは分からない。…まぁ生きてようが死んでようが、他の人間の苦しみなんか、本当の意味では分かりようがないからね、分かったフリして叱るのも、励ますのも、どっちもなんか違う気がするんだよ…。 アキラ …。 母   それに、死んでいるから、いざ辛いときに近くに行って、優しい言葉をかけてあげることだってできやしない…。 アキラ オフクロ…。 母   だからさ、もちろん、死んでほしくなんかないんだけどさ、アンタが迷いに迷って出した結論なら、仕方ないのかな?とも思うんだよ。 神   え?あれ?そんな話になんの?上手いこと説得してくれるもんだとばかり思っていたのに、まじで? 母   ただね…、アンタにも言ってなかったんだけどさ…。 アキラ ?何だよ? 母   アンタ、…本当はお兄ちゃんがいたんだよ。 アキラ は? 母   ま、アンタが生まれる前の話だからね、あえて伝えもしなかったんだけどさ。 アキラ 何だよ…それ…。 母   そして、アンタを生んだ後、…これも小さい頃の話だから覚えてないかねぇ…、母さん、しばらく入院していてね、子供、生めない体になっちゃったんだよ…。 アキラ え…? 母   もう何もしてやれないけどさ、母さんにとっちゃ、アンタはようやく育てられたただ一人の大切な子供なんだよ。だからさ…。 アキラ …。 母   できることならもう一度、考え直しておくれよ。大人になれなかったお兄ちゃんや、生んでやることすらできなかった弟たち、妹たちの分もさ、頑張ってほしいんだよ…。 アキラ …。 母   なんだか湿っぽい話になっちまったねぇ…、ごめんごめん。母さんたちの勝手を、押し付けることなんかできやしないのにねぇ。アンタがいじめられている苦しみに、気付いてやることすらできなかったっていうのにね…。 アキラ オフクロ…。 母   神様。 神   あ、はい。何でしょう? 母   ありがとうございました。もう、思い残すことはありません。 神   あ、もうよろしいんで? 母   はい。 神   それじゃ…(構える)ギージーンーカー…。 アキラ 待てよ!オフクロ! 神   え?ちょ、ちょっと…。 アキラ 自分の言いたいことばっかり言いやがって!それで帰るつもりかよ! 母   ごめんね、でも、これ以上神様に迷惑かけられないだろう?それにここから先は、アンタが決めることじゃないか。 アキラ そうだけれど…、 神   うん…、も、もういいかな? アキラ でも、そうじゃない、俺、言わなきゃならないことがあるんだよ! 母   何だい? 神   もう無理…。 アキラ オフクロ………あ…。 神   解除―! ―神、タイミング悪く擬人化解除を使い、擬人化エフェクト  (いつもより音大きめ) ―アキラの最後のセリフ、音にかき消される。 ―直後、母にスポット、一瞬の静寂の中、 母   (笑って)どういたしまして。 ―スポット、C.O. ―母、去る。 ―少しの間、静寂 神   あ、あの、えーと…、ごめんね。 アキラ 何、謝ってんだよ。 神   いや、何かタイミング悪かったなぁ…、て。 アキラ 確かにな…。 神   でも、キミだって悪いんだよ?もう帰るって時に突然話しかけて、その上、あんなもったいぶった言い方するから…。 アキラ …そうだな。 神   …。 アキラ …。 神   …ごめんね。 アキラ だから何謝ってんだっての! 神   だって、なんか…、こういう空気苦手…。 アキラ 苦手って、アンタ神様だろ。 神   神でも苦手なもんは苦手なの。 アキラ ったく、しょうがねぇな…分かったよ…。じゃ、俺も元の場所に帰るか。 神   はい…え?あ…、え?あの、いいの? アキラ うろたえるな。 神   擬人化のし忘れとかない? アキラ ねぇよ。 神   …やっぱり、まだアレな感じ? アキラ 何だよ、アレな感じ?って。 神   いや、何つーか、まだ死にたいのかなーって…。 アキラ 大丈夫だよ、あんなこと聞かされたら、死ぬに死ねないだろ。 神   でもなぁ…。 アキラ 大丈夫だっつってんだよ。 神   そんなこと言ったって、また来月とかになぁ…。 アキラ ならねぇよ!…なんかさ、俺が知らなかっただけでさ、俺の命も、俺一人の命じゃないんだなって、分かったからさ。 神   ほほぅ…。 アキラ それに、やらなきゃならないことも、いくつか出来たし。 神   そうか、じゃ、もう大丈夫だな。 アキラ ああ、いろいろ世話になったな。 神   べ、別に、アンタのためにやったんじゃないんだからねっ! アキラ そういうのはいらない。つーか気色悪いからやめてくれ。大体俺のためじゃなかったら何のためだったんだよ! 神   決まっているだろう。 アキラ …。 神   …。 アキラ いや、何か言えよ! 神   今日もいいお天気で。 アキラ 誰が井戸端会議しろって言ったよ。 神   だって何か言えって…。 アキラ さっきの話の続きをしろって言ってんだよ!「決まっているだろう」だけじゃ何のことだか分からねぇだろ! 神   仕方ないなぁ…、じゃ、この杖の先を見て。 アキラ これか? 神   うん、そう。よーく見ててね…、まだ動かないで…せーの!元の場所に戻れー!(杖振りかざす) アキラ うわっ!騙しやがったな! 神   ははは、礼には及ばん。さらばじゃー…。 アキラ 礼なんか言ってねぇー…。 ―マジカルなSEとともに、アキラ、ハケ。 ―神、ソデの中から薄汚れたお守り、再び取り出して、 神   決まっているだろう…おふくろさんのためだよ。…なぁ。 ―神、そのまま杖を振り上げ、暗転 ―直後、 ―落下音、何かがつぶれるような音 ―群集のざわめき、救急車、パトカーのサイレンと続き ―やがて静寂 ―ブルーの薄明かりの中、アキラ立っている。 アキラ ?あれ?あれ?あれれ? ―そこに神、遅れて出てくる 神   ゴメン!死んじゃった? アキラ 「死んじゃった?」じゃねぇよ!死んじゃったよ。何だよコレ! 神   ゴメン。本当にゴメン。本当にゴメンとしか言いようがない! アキラ いや、ゴメンはいいから、一体何がどうなってこうなったのか説明してくれよ。 神   いやさ、元の場所に戻した後にさ、あれー?そういえば今日ってカーニバルの日だよなー?って思い出したんだよ。 アキラ ?カーニバルって?? 神   どうぶつの森のカーニバル。 アキラ ゲームの話かよ!っていうかそれとこれとどう関係があるんだよ! 神   でさ、慌てて3DSを始めたんだけど、動かないんだよ。で、あ!そういえば時間止めてたっけ、ウッカリー、って思って、時間動かし始めたら…、何か、キミ、落っこちちゃって…。 アキラ そりゃ落っこちるよ、飛び降りの最中だったんだから。助け出してからはじめろよ! 神   そっか、そっちが正解だったかー!てへぺろー。 アキラ ふざけてんのか、コノヤロー!…で、どうすんだよこの状況。 神   どうすると言われても、さすがに死んだ人を蘇らせることはできないからなぁ…。ようこそ!死後の世界へ! アキラ 開き直んな!…え?できないの?神様なのに? 神   そんな都合のよいときばっかり神扱いしないでくれよ。 アキラ いや、さっきまでだって相当都合よく神の力使ってたじゃねぇか!…え?マジでだめなの? 神   うん、無理。来世に乞うご期待!! アキラ そんな…、こんな終わり方ってねぇだろ!何もかも台無しじゃねぇか、ヘンに人生振り返ったせいで後悔しかねぇよ、この最低神。 神   最低神はやめて、地味に傷つく。 アキラ こちとら傷つくどころの騒ぎじゃねぇんだよ!何とかなんないのか?本当に…。 神   そういわれてもなぁ…何とかしようにも、ひとつしか方法思いつかないし…。 アキラ あんじゃねぇかよ!もったいぶりやがって! 神   え!?でもひとつしかないよ、選択の余地ないよ?いいの? アキラ ひとつありゃ十分だろ。 神   そう…、じゃあ伝説の樹の下で待ってて。 アキラ 伝説の樹の下? 神   うん、そこに一番相性のよかった相手、運命の相手とでもいえばいいかな?とにかくそんな相手が来るから。 アキラ いや、いろいろ分かんないことばっかりなんだけど…。 神   そいつと誓いのキスをすれば、自殺する前の時間に巻き戻すことができる。 アキラ ええ!?…ん?あれ?いや…、生き返るんじゃなくて? 神   生き返らすのは無理。 アキラ 時間を巻き戻すのも相当無理あるような気がするんだけど…。 神   だってそこは神だから。 アキラ そこの境界がいまひとつ分からん。 神   いいじゃん、結果的に生き返るんだからさ。…ええと、じゃあ(杖渡して)コレ、伝説の樹ね。 アキラ 肝心な部分、やっつけ仕事じゃねぇかよ! 神   じゃ、ちょっと雰囲気作って(指鳴らす) ー照明、明るい感じのシルエット ーBGM、(告白の感じの曲) アキラ いざとなると緊張するな、ていうかキスごときで本当に時間巻き戻んの? 神   愛の力ってのは奇跡を起こすんだよ。ほら、よく地球を救ったりしてるし、大丈夫だから…、それじゃ、いってみよー! ー舞台に髪が長く、スカートを履いた人物やってきて、アキラに背を向けるように立つ アキラ こいつが、オレの運命の相手…。 ーアキラ、その相手にゆっくり近づき、振り返らせる ー瞬間、その相手にスポット当たる ーそれは長い髪のウィッグを付け、スカートを履いたベンさんだった。 ベン  世界中の誰よりもあなたが、好きです。 アキラ ぎゃー!! ーアキラ、逃げようとするが、ベンさんにがっちり掴まれる。 アキラ うわー、何だよコレ!何でベンさんなんだよ。 神   だってキミ、一番ベンさんと話してたじゃん。 アキラ え?運命の相手って、擬人化した相手の中からってこと? 神   そうだよ、あれ?言ってなかったっけ? アキラ 聞いてねぇよ! 神   ま、でもこれで時間も巻き戻ることだし。 アキラ オレの記憶からも消えるのか? 神   大丈夫!記憶は残るから。 アキラ 消えて欲しいんだよ!え!ちょっ!タンマ、キャンセル!キャンセルだって! 神   えー、今さら?…どう?ベンさん。 ベン  大丈夫、優しくするから。 神   続行っ! アキラ 続行じゃねぇよ!やめろぉ〜…! ーベンさんとアキラの顔近づく ―唇が重なる直前に暗転 ―そして豪快なキスSE ―場転 ―風の吹きすさぶ早朝のビルの屋上 ―徐々に明かりがつくと、アキラ、踊り場にうなされながら寝転んでいる アキラ う、う〜ん…、や、やめろー! ―アキラ、飛び起きるように目を覚まし、構えながら周りを窺う アキラ …あれ? ―アキラ、徐々に構えを崩し、周囲を見渡す。 アキラ …ココって…。 ―アキラ、色々と確認しながら、何気なくポケットを漁ると何かが手に当たる アキラ ん? ―アキラ、取り出すとくしゃくしゃになった紙が出てくる アキラ …ま、まさか…。 ―アキラ、恐る恐る広げる、と、それは遺書だった。 アキラ …ぷ…ははは…、夢かよ…。そりゃそうだよな、あんなことあるワケねぇもん…、ははは…、それにしても後味の悪い夢だったよなぁ…。でも。 ―アキラ、手に持った遺書をしばらく眺め、ふいに遺書を丸め、ソデに放る アキラ もうちょっと、頑張ってみるか! ―アキラ、踊り場から降りてくる ―と、そこにノラネコがやってくる アキラ ん?なんだネコか…、…あ!そうだ! ―アキラ、思いついたように擬人化のポーズをとる アキラ 「ギジンカー!」 ―擬人化エフェクトは発生せず、ノラネコ、そのまま去る ―アキラ、そのままノラネコを見送って アキラ ははは…、なんてな。そりゃそうだよな、夢の…話…だもん…なぁ〜!! ―アキラ、ソデに何かを見つけ、全力で逃げ出す ―そこにネコ耳つけたベンさん、全力で追いかけながら登場 ベン  待ってぇ〜、ダーリーン! ―二人、追いかけっこしながら                      (―幕―)