『最終戦争前夜(ハルマゲドン・イブ)』             作 伊佐場 武 CAST ウエダ : ナカヤマ: シモムラ: ネコバス(兼N): ―BGM「地球を護る者」(幻魔大戦) N   近未来、はるか宇宙の彼方から人類を滅ぼそうとする存在が突如現れ、刻一刻と地球に迫っていた。その最中、本能で危機を察知した一部の人類が超能力に目覚め始めた。そしてその脅威を前に、世界中から超能力者が集結し、立ち向かおうとしていた。この話は、決戦前夜になってなお彼らに合流できずにいた三人の超能力者を描いたものである。 ーバス停 ー停留所の標識とベンチがあるだけ(ベンチのうらにバケツ) ー標識には「行き先 合流場所」とのみ記載があり、時刻表には何も記載されていない ーベンチに座るウエダ(寝ている)、リュックを持っているが、サイズの割りに中身が少ない様子 ーそこに、ナカヤマが、それほど大きくない荷物を持って登場 ーナカヤマ、周囲を窺うようにして標識に近づく ナカヤマ ええと・・・、ここでいいのかなぁ・・・。(標識みて)合流場所とは書いてあるけど・・・、時間かいてないし・・・。 ーナカヤマ、ウエダに気付く ナカヤマ あ、あのぅ・・・。 ウエダ  (寝ている) ナカヤマ あの・・・、スミマセン。 ウエダ  …う…ん………だれ?? ナカヤマ あ!いや、お休みのところ申し訳ありません。…もしかして、あなたも合流場所に? ウエダ  合流場所って…、ん?あ、ああ、そうそう、そうだよ。え?あ、君も? ナカヤマ はい!ああよかったぁ〜、ちょっと場所わからなくなってしまって、で、そこの標識見つけたんですけど、あれ時間書いてないじゃないですか?だからちょっと不安になってたんですけど…、よかったぁ、ここで待ってればいいんですよね? ウエダ  うん?知らね。 ナカヤマ はい!…て、ええ!?知らねって何ですか?待ってるんじゃないんですか?? ウエダ  待ってるよ。 ナカヤマ じゃあここで待ってればいいんですよね? ウエダ  いや、だから知らねぇっての。 ナカヤマ んんん?じゃあアナタ、何でここで待ってるんですか? ウエダ  だってそこに合流場所って書いてあんじゃん。 ナカヤマ じゃあここでいいんじゃないですか…。 ウエダ  だから知らねぇよ!!何度も言わすなよ!! ナカヤマ …?あなた何いってるんですか? ウエダ  ああん!?ケンカ売ってんのか!? ナカヤマ ケンカ売ってるのはそちらでしょう?ここで待っていれば良いのか?と聞けば知らないというし、じゃああなたは待っているのかと聞けば待っているという・・・。あなたの意見は明らかにムジュンしているッ!! ウエダ  矛盾なんかしてねぇよ!俺はこの場所で待っちゃいる。その標識もあることだしな・・・。だが、この場所で間違いないかは分からない。 ナカヤマ 待っているってことは、この場所で間違いないと思っているからでしょ? ウエダ  …来ねぇんだよ。 ナカヤマ …は? ウエダ  来ねぇんだよ!迎えのバスが!! ナカヤマ そんな…ちょっとバスが来ないくらいで…。 ウエダ  ちょっとじゃねぇよ!そこの時刻表に時間書いてねぇだろ?だから、とりあえず少し待って、もうすぐかな?と思いながらしばらく待って、いい加減くるだろうと思い待ち続けて、気がつけば一週間。 ナカヤマ ええ?嘘でしょう? ウエダ  最近思うんだ…、場所、違うんじゃねぇかな?って。 ナカヤマ 気づくの遅すぎですよ!…ていうか、そうするとどこで待てばいいんでしょうね?ここじゃないとすると…。 ウエダ  いや、まだここじゃないと決まったわけじゃないぞ。俺は月曜日から待ち続けている。で、今日は日曜日だ!この事実が示す意味、お前に分かるか? ナカヤマ …いえ、さっぱり…。 ウエダ  今日は休日運行の可能性があるってことじゃないか! ナカヤマ …いや…さすがにそれは…。 ウエダ  ないと言い切れるのか? ナカヤマ そういうわけじゃないですけど…。 ウエダ  だったらいいじゃないか、今日一日ですべてがハッキリするんだ。それまで一緒に待とう。 ナカヤマ ……え?僕もですか? ウエダ  まあまあ、遠慮するなって。 ナカヤマ いや、別に遠慮なんかしてないですよ。 ウエダ  大体、他に行くアテなんかないだろう? ナカヤマ …まぁ、確かにそうですけど…。 ウエダ  ごめんな、何もないところで。 ナカヤマ いや、あなたの家じゃないでしょう? ウエダ  ところで君の能力は? ナカヤマ え? ウエダ  能力だよ…、(標識指して)アレが目的ってことは、君も何かの超能力持ってるんだろう? ナカヤマ ああ…はい…。一応は…。 ウエダ  何?どんな能力? ナカヤマ それは…追々…。 ウエダ  何だよもったいぶりやがって。…やっぱり念動力とか有名どころの能力か? ナカヤマ いや、マイナー系です。たいした能力じゃないですから…。 ウエダ  そうだな…、イメージ的に…肉体強化型の何かか? ナカヤマ 肉体強化といえば…、そういえなくもないような…、ほんとにたいした能力じゃないんで。 ウエダ  肉体強化でマイナー系…、体が硬くなる能力とか? ナカヤマ お!鋭いですね。 ウエダ  当たった!?硬くなる能力って地味だけど色々使えそうじゃん。 ナカヤマ いや…でも・・・全身じゃないんで・・・。 ウエダ  部分的硬化でも十分じゃないか。手や脚なら攻撃にも防御にも使えるし・・・。 ナカヤマ その・・・ケツなんです。 ウエダ  は? ナカヤマ 硬くなる部分、ケツなんです。 ウエダ  そんな・・・ヒルナンデス風に言われても・・・。 ナカヤマ いや別にヒルナンデス風には言ってないですよ。 ウエダ  ・・・そ・・・っか・・・。え?他は・・・。 ナカヤマ なりません、ケツだけです。 ウエダ  お・・・おおぅ・・・。どんな風に・・・? ナカヤマ ケツにぎゅっと力を込めると硬くなります。 ウエダ  そりゃお前、単に力入れてるだけじゃねぇのか?そんなの俺だってできるよ。 ナカヤマ そう思うでしょ?ところが並みの硬さじゃないんです。みんな最初せせら笑って、触ってびっくりするんですよ。 ウエダ  本当かぁ〜? ナカヤマ じゃ、試しに触ってみますか? ーナカヤマ、尻に力入れる ーウエダ、触る ウエダ  硬っ!!なんだコレ??硬っ!! ナカヤマ ね?想像を絶したでしょ? ーウエダ、触るだけではなく叩きはじめ、徐々に力を入れ始める ウエダ  ああ、ビックリだよ。・・・何か上手く伝えられないけど想像以上だった。(思い切りどつく) ナカヤマ 痛っ!ちょ、ちょっと待ってください! ウエダ  どうした? ナカヤマ 痛いですから。殴られると痛いですから。 ウエダ  ええ!?こんなに硬いのに? ナカヤマ 硬くなるからって痛みを感じなくなると思ったら大間違いです。僕のケツは硬くなっても、ダメージはそのままです! ウエダ  え?じゃ、本当に硬いだけ?防御力アップとかじゃなくて? ナカヤマ とかじゃないです! ウエダ  何かややこしい能力だなぁ・・・。 ナカヤマ まぁ、色々と中途半端なんで。だからあんまり言いたくなかったんですよ。 ウエダ  悪かったなぁ・・・、でもあの硬さはスゴいよ! ナカヤマ 役に立つとは思えないんですけどね。 ウエダ  そんなことはない。何かに使えることがあるはずだ!きっと、多分、おそらく、もしかすると・・・。 ナカヤマ いやいや、徐々に自信なくなっていっているじゃないですか。まぁいいですけど。で、あなたの能力は? ウエダ  俺か?よくぞ聞いてくれた! ナカヤマ まあ、流れ上必然的に・・・。 ウエダ  じゃあ俺も当ててもらおうかな? ナカヤマ いいですよ、めんどくさいから。 ウエダ  そう言うなって・・・、ヒント、自然操作系です。 ナカヤマ 自然操作系!?山を噴火させたり、風を巻き起こしたりするアレですか? ウエダ  いきなりハードル上げるなよ。そこまで大規模ではないけど、自然を操っている感ある能力さ! ナカヤマ スゴイじゃないですか・・・ええ?なんだろう?自然操作系・・・。植物とか関係ありますか? ウエダ  いいところ突いてくるねぇ・・・。植物は関係あります! ナカヤマ おお!植物か・・・、あ!あれじゃないですか?植物と話ができるとか? ウエダ  それちょっとヤバイ人間だから、友達いない人だから。 ナカヤマ そんな感じしたんですけどねぇ・・・。 ウエダ  どういう意味だよ!ていうかそれ自然操作系じゃねぇだろ! ナカヤマ じゃあ、木とかに意思を宿らせて話相手にすることができるとか! ウエダ  何でそっち方面に持って行きたがるんだよ。それだって自然操作とちょっと違うじゃねぇか! ナカヤマ じゃ、ギブ ウエダ  早いよ、もうちょっと頑張れよ。まだあるだろう自然操作系。つーか自然操作系の答え出てねぇし。 ナカヤマ だってわかんないんですもん。 ウエダ  じゃ、ヒント。たくさん生えます。 ナカヤマ え?それってもう答えじゃないですか?木とか草とかたくさん生やすことができる能力ですか? ウエダ  うーん、そんなにバリエーション豊かじゃない。 ナカヤマ え、じゃあ木?・・・草?・・・花?・・・キノコ? ウエダ  お!最後のが近い。 ナカヤマ キノコが近い・・・というと・・・もしかして・・・カビ? ウエダ  ピンポンピンポン!正解です!! ナカヤマ スゴイ能力じゃないですか。 ウエダ  そう思うか? ナカヤマ スゴイですよ。相手の全身をカビで覆い尽くして身動き取れなくするとか、相手の肺に毒の胞子を撒き散らすカビを植えつけてじわじわ殺すとか・・・。 ウエダ  うわ、何だそれ。お前発想がコワイよ・・・。 ナカヤマ え?違うんですか? ウエダ  違うよ!そんなところ構わずどこでも自由にカビ発生させられるワケじゃないし・・・。 ナカヤマ え?場所にも縛りがあるんですか??じめじめしたところ限定とか? ウエダ  ・・・カレー ナカヤマ は? ウエダ  カレー。 ナカヤマ どうしたんですか?いきなり・・・。 ウエダ  だからカレー。 ナカヤマ いや、だから、じゃなくて何なんです?話の流れぶったぎって・・・。 ウエダ  だから、俺の能力は、カレーに大量のカビを発生させることができる能力なんだって! ナカヤマ ・・・。 ウエダ  ・・・。 ナカヤマ ・・・カレー限定? ウエダ  カレー限定! ナカヤマ え?それって作って一ヶ月ぐらい放置したからとかじゃなくて? ウエダ  それじゃただの自然現象じゃねぇか。そうじゃなくて触った先からカビが生えてくるという能力。 ナカヤマ ・・・意味あるんですか? ウエダ  意味はないね。ただ俺がカレーを食えなくなっただけだ。 ナカヤマ ・・・なんか、自然操作系と聞いて、浮かれて壮大な能力期待してごめんなさい・・・。 ウエダ  なんでお前が謝るんだよ、俺がみじめになるじゃないか! ナカヤマ だって能力のダメさが突き抜けてるんですもん。 ウエダ  突き抜けてねぇよ!お前のケツ硬能力とどっこいだろう? ナカヤマ そうですね、それでいいですよ。僕の能力には別にデメリットなんかないけど、どっこいということでいいです。 ウエダ  俺を憐れみの目で見るなぁ!! ー二人言い争っているところに、シモムラ自転車で登場 ー一旦二人の前を横切りソデにはけた後、自転車置いて戻ってくる ーシモムラ、いちいちうっとおしくポーズをとりながら、バス停の標識、自分の手帳、あたりの風景を見ていく ー考えて、うなずき、手帳をわざとらしく音を立てながら閉じ、納得したようにベンチにゆっくり座ってから、ふいに二人に向かって、 シモムラ 合流場所へのバスはここで待っていればよいのかな? ウエダ  わかんなかったのかよ! ナカヤマ 最後、分かった風な動きしてたくせに・・・。 シモムラ なるほど、君たちも合流場所に行こうとしている超能力者ということか…。 ウエダ  すげーな、何も言ってねぇのにコイツの中では会話が成立しているらしい。 ナカヤマ この人も超能力者なんですかね? シモムラ よくぞ聞いてくれたッ! ウエダ  聞いたワケじゃねぇけどな。 シモムラ 私の能力は時間操作系だッ! ウエダ  はいはい、時間操作ね・・・。 ナカヤマ なーんだ、時間操作か・・・。 シモムラ ・・・ ウエダ  ・・・ ナカヤマ ・・・ シモムラ ・・・そして時は動き出す・・・。 二人   何ィー!時間操作ァァア!! シモムラ そう、私は時の支配者ッ!何なら今からその能力をお見せしようか? ウエダ  うお!スゲー、本格的なヤツ来やがった! ナカヤマ 何しろ僕たち、ケツ硬とカレーカビですからね。 ーシモムラ、カップ焼きそばとお湯の入った水筒、そしてキッチンタイマーを取り出す シモムラ まずはこのカップ焼きそば、調理方法は知っているかね? ウエダ  お湯を入れて3分!だろ? シモムラ その通り! ナカヤマ UFOですか・・・、僕はペヤング派だなぁ・・・。 シモムラ ではそこのペヤングな君にはこれを預けよう。 ナカヤマ おお!遂に時間に関するアイテムがっ! ウエダ  いやいや、ただのキッチンタイマーだろ?・・・これ、3分にセットするのか? シモムラ いや、1分だ。私は今からこの容器の中の時間を3倍速にする。 ナカヤマ なるほど・・・1分・・・と。 シモムラ よし、では調理にかかる。 ーシモムラ、カップ焼きそばを準備 ―以降の寸劇の合間に、お湯(少なめ)を注ぎ、ふたを閉め、 ―キッチンタイマーをスタートさせる シモムラ そういえば、ザッハトルテって何か強そうだよね? ナカヤマ いや、いきなりそんな話されても意味が分からないです。 ウエダ  確かに「宇宙戦艦ザッハトルテ!」とかありそうだよな。 シモムラ おお!「(ウエダに)モンブラン艦長…、モンテール艦隊、全滅の模様・・・。」 ウエダ  「何!もはやここまでか・・・!」 ナカヤマ 何やってんですか? シモムラ 「くそっ!ゴディバ帝国め!!」 ウエダ  「しかしこのままでは終わらせん!(シモムラに)マカロン!全てのエネルギーを主砲にまわせ!…目にもの見せてくれる。」 シモムラ 「主砲に?ま、まさか!」 ウエダ  「ブッシュドノエルを使う・・・」 シモムラ 「ブッシュドノエル・・・!?本気ですか!?艦長!」 ナカヤマ あのー・・・。 ウエダ  「…この戦いで、私は多くの友人を失った…、かつての戦友、モロゾフ将軍もまた、その一人だ…。」 シモムラ 「シャトレーゼ戦役の英雄、モロゾフ将軍…。」 ウエダ  「彼らの尊い犠牲に報いるためにも、我々はこの宙域を放棄するわけにはいかんのだ!」 シモムラ 「艦長…了解、しました…。全エネルギー、主砲へ転換。ブッシュドノエル、スタンバイ!」 ナカヤマ ちょっと… シモムラ 「(ナカヤマに)何をやっているんだハーゲンダッツ!トリガーを引くのはお前の役目だろ!」 ナカヤマ いや、ちょっと巻き込まないでくださいよ!何なんですか、ハーゲンダッツって。 シモムラ 「いいから座れ!(キッチンタイマーを持ち)ブッシュドノエル、最終安全装置解除!カウントダウン(キッチンタイマー見ながら)・・・3、2、1!」 ナカヤマ 「当たれぇ〜!!」 ーキッチンタイマー鳴る(と共にウエダとシモムラ元にもどる) シモムラ よし、出来た! ナカヤマ (劇中劇の最後のポーズのまま) ウエダ  何やってんのお前? ナカヤマ え? ウエダ  こっち、出来あがったから。 ナカヤマ あ・・・はい・・・。 シモムラ お湯を捨てて・・・、フタをはがせば。ホラ食べごろ状態! ーシモムラ、ベンチうらのバケツにお湯を捨てふたはがし、箸で麺をつかむが、どう見ても硬い ナカヤマ いや・・・硬くないですかそれ? シモムラ (バリバリ食べながら)ん?ベビースターみたいで美味しいよ? ウエダ  硬いんじゃねぇか!ただの硬麺好きじゃねぇか! ナカヤマ 途中からウスウス感じてましたけどね・・・、やっぱりここには中途半端な能力者しか集まらないんですかね? ウエダ  いや、待て。アイツのは超能力じゃないから、ただの食の好みだから。 シモムラ 超能力だよ〜。 ウエダ  うるせー!黙れ!さっさと喰ってここから去れ! ーその時、轟音 ー三人、驚いてその場に伏せる ウエダ  今回のはデカかったな・・・。 ナカヤマ 何です!?今の。 シモムラ 敵の攻撃だ。 ナカヤマ 敵って、例の宇宙からの脅威ってヤツですか? ウエダ  ああ、そうだ。 シモムラ ヤツらに立ち向かうべく、俺たちは集められたんだからな。 ナカヤマ いや・・・ちょっといいですか? ウエダ  どうした。 ナカヤマ 立ち向かえますかね?僕たち・・・。 シモムラ 何だ、怖気づいたのか? ナカヤマ いや、怖気づいたっていえばそうかもしれないんですけど・・・、なんかマジな攻撃だったじゃないですか、今の。 ウエダ  まあな。 ナカヤマ あんなのに対して僕たちの能力なんか役に立たないんじゃないですか? ウエダ  それは・・・。 シモムラ そんなことはない! ナカヤマ え? シモムラ 私たちの能力は確かに、一人一人ではたいした役には立たないかもしれない。だが皆で協力すれば、大きな何かを成し遂げることができるはずだ。 ナカヤマ そう・・・ですかね・・・? シモムラ ああ。ちなみに君たちの能力は何だ? ナカヤマ あ、僕はケツが硬くなる能力です。 ウエダ  俺はカレーにカビが生える能力だ。 シモムラ で、私は時間早送り・・・。 ウエダ  いや、お前のはウソだろ。 シモムラ うん!勝ち目ないな。逃げよう! ナカヤマ え?え??前言撤回?? シモムラ だって考えてみろ、ケツが硬くなる、カレーにカビ生える、時間早送り。どう組み合わせても攻撃につながらないじゃないか・・・。 ウエダ  お前のはウソだけどな! シモムラ とにかく退散だ。 ー三人、それぞれの荷物を持って逃げようとする ーしかしその直後、UFOの飛行音と爆撃音 ー背を合わせ、辺りを警戒する三人 ウエダ  まずい!囲まれた!! ナカヤマ え?どうなるんです?これ。 シモムラ 万事休すだ! ナカヤマ えぇー!! ウエダ  くそー!死ぬ前にもう一度だけ、カレーが喰いたかったぜ! ナカヤマ 突然何言い出すんですか! ウエダ  俺はカレーが好きなんだ!でもこの能力のせいでカレーが喰えなくなったんだ! シモムラ そいつは・・・悲惨だな・・・。 ウエダ  もしここにカレーがあるなる、カビだらけでも構わない!思う存分喰ってやるのに!! ナカヤマ あ!ありますよ。カレー。 ーナカヤマ、荷物からコンビニ弁当風のカレー取り出す ウエダ  え?何で?? ナカヤマ こんなこともあろうかと思いまして。 ウエダ  いや、どんな状況を想定したんだよ!ピンポイントすぎるだろ!! シモムラ ・・・もしや、予知能力者か? ナカヤマ いや、ただ単に用意周到なだけですよ。よかったらどうぞ。 ウエダ  いいのか・・・、ありがとう・・・。 ーウエダ、カレーを受け取ろうとするが、ナカヤマの手から容器が落ち、そのまま紐で引っ張られるかのごとく袖に引きずられる ナカヤマ あれっ!何で!? シモムラ ・・・キャトルミューティレーションだ・・・。 ウエダ  懐かしいワードが出てきたな。久しぶりに聞いたよ、キャトルミューティレーション。 ナカヤマ 何です?それ。 ウエダ  ざっくり言うと宇宙人が牛さらうやつ。 ナカヤマ あ、何か聞いたことあるような・・・。 シモムラ それよりいいのかアレ。 ーシモムラ、容器を指差す ーじわじわと、しかし確実にひきずられるカレー容器 ウエダ  あ!待て!! ーウエダ、手を伸ばし追いかけようとする ―しかし、突然スピードアップし、ソデに消えるカレー容器 ウエダ  ちくしょう!! シモムラ 諦めるのはまだ早い!ちょっと待ってろ!! ーシモムラ、ソデにはける、が。 シモムラ なんてことだー!! ウエダ  どうした!? ナカヤマ 何があったんです? ーシモムラ、自転車を押して登場、しかし、サドルがない シモムラ すまん・・・先ほどの攻撃で、サドルだけキレイになくなったらしい・・・。 ナカヤマ ええ!?サドルだけ?? ウエダ  くそー!これじゃ自転車に乗れない!! シモムラ ああ、こんな状態で乗れるとしたら、そいつは相当ケツが頑丈なヤツだ。 ウエダ  そうだな、ものすごくケツが硬いやつじゃない限りこれは無理だ! シモムラ ケツの硬いヤツ・・・ ウエダ  ケツの硬いヤツ・・・ 二人   (ナカヤマを指して)あーっ!! ナカヤマ 見え透いた茶番はやめろー! シモムラ 我々の運命は君に託された・・・。 ナカヤマ え?何で乗る流れになってんの?承諾してないんですけど・・・。 ウエダ  カレーを奪われればヤツらの勝ち・・・、奪い返せば、人類の勝ちだ! ナカヤマ そんな重要なミッションじゃないですよね、コレ? シモムラ 前後輪ブレーキ、異常なし。 ウエダ  チェーンたわみ、許容範囲内。 シモムラ タイヤエアー前輪! ウエダ  後輪! 二人   オッケー!! ナカヤマ 何息のあったことやってんですか、乗りませんからね。 シモムラ ロードコンディション、おおむね良好! ウエダ  追い風2メートル、問題なし! シモムラ パイロットコンディション・・・ ナカヤマ ・・・ ウエダ  パイロットコンディション? ナカヤマ ・・・ 二人   パイロットコンディション! ナカヤマ 分かりましたよ、乗りますよ、乗ればいいんでしょ? 二人   OK!! ーナカヤマ、渋々自転車にまたがる シモムラ まずは前に進むことだけ意識して… ナカヤマ いや、さすがに自転車に乗るぐらいできますよ。 ウエダ  左手は添えるだけ… ナカヤマ ちゃんと握ります。ブレーキかけられなくなるじゃないですか。 シモムラ やや内角を、えぐりこむようにして打つべし! ウエダ  まっくのっうちっ、まっくのっうちっ。 ナカヤマ ちょっと、黙っててください。今行きますから。 ーナカヤマ、自転車のスタンドを倒す ナカヤマ じゃ、行ってきます。(走り出す) ー敬礼で送るウエダとシモムラ ウエダ  多分取り戻せないんだろうな。 シモムラ 相手、UFOだしな、浮いた時点でアウトだろう・・・。 ウエダ  ま、いいや。とりあえず一矢報いられるようにしといたから。 シモムラ ん?何か仕込んだのか? ウエダ  さっき手を伸ばしたときにね。あのカレーの内側にカビを植えつけてやった。 シモムラ 何!?じゃあアレ食べた瞬間大変なことになるぞ。 ウエダ  え?そっちも何か仕込んだのか? シモムラ 時間爆弾を・・・。 ウエダ  時間爆弾?? シモムラ 何かをきっかけに時間早送りが作動するトラップみたいなものだ。 ウエダ  え?時間操作の超能力ってウソじゃなかったのか? シモムラ 私はウソだなんて一言も言ってない。君たちが信じなかっただけだ。 ウエダ  だってさっきの・・・。 シモムラ 特定の時間に止めるのは苦手なんだ。特に3分なんて細かいのはな。今回の時間爆弾のように大雑把な設定ならいくらでもやれる。 ウエダ  ええ!?じゃ、やっぱり時の支配者!? ーその時、一斉にUFOが飛び去っていく音が響く シモムラ どうした?何があったんだ? ウエダ  全部どっかとんでいっちまったぞ!? ーそこへ、へとへとなナカヤマ、ケツさすりつつ、徒歩で帰ってくる ナカヤマ みなさ〜ん・・・イテテ・・・。 ウエダ  おお、やっぱり追いつかなかったか? ナカヤマ いえ、追いつくには追いついて、一度はカレー捕まえたんですが、そのまま一緒にUFOに捕まっちゃって。 シモムラ 捕まえたつもりが捕まってたっていうパターンだな。 ナカヤマ で、中に入ったら、敵の隊長みたいのが居て、あっけなくカレーを奪われたわけですよ。 ウエダ  おお!それで。 ナカヤマ それで、隊長みたいのがカレーを食った瞬間!なんと、全身カビだらけになったんです。 シモムラ あ! ウエダ  やっぱり! ナカヤマ え?何か知ってるんですか? ウエダ  俺のカレーカビと シモムラ 私の時間早送りの 二人   コンビネーションアタックさ。 ナカヤマ ええ!?そうだったんですか?僕ビックリしましたよ、突然全身が青とか緑とかの、あの、モコモコって感じになって・・・、ちょっとしたホラーですよあれ。 ウエダ  それで、お前はどうやって帰ってきたんだ? ナカヤマ 何か、他の隊員みたいなやつらが『こんな恐ろしい星には居られない』とか言って退却しはじめて、その道すがら、僕を落としていったんです。 シモムラ 落とされたのか? ウエダ  よく無事だったな。 ナカヤマ ちょうどケツから落ちたんで・・・。 シモムラ あ!硬いケツか!! ウエダ  でもダメージは受けるんだろ? ナカヤマ ええ、だから今ものすごくケツが痛いです。見た目も実際もケガしてませんが、骨折並みの痛さがケツに宿っています。 ウエダ  いや、骨折じゃすまねぇんじゃねぇのか? シモムラ しかし、みんな無事でよかった。ホラ、言っただろ?みんなの力をあわせれば立ち向かえると・・・。 ウエダ  前言ってたのとちょっと内容変わってねぇか? ナカヤマ そもそも一度撤回して逃げようとしてましたしね。 ーそこに、「行き先 バス停」と書かれたスケッチブックを首から提げ、ネコ耳をつけたネコバスがやってくる。 (ネコバスは極端に訛っている) ネコバス いやいやいやいや、まいったよぉ・・・渋滞に巻き込まれちってさぁ・・・悪りぃな、待った? 三人   ・・・ ネコバス どうしちったんだよ、そんなこえぇ顔して。 ウエダ  つか、誰だお前!? ネコバス 俺?見てわかんね?わかんねかぁ〜。(標識指して)ホレ、んで(スケブみせて)ホレ、そして(ネコ耳指して)ホレ。 ナカヤマ 変態ですか? ネコバス ちげーよ。お前、見かけによらず失礼だな。(再度3つ)コレとコレとコレだよ。わかっぺ? シモムラ いや、わかんないから、それみせられたところで。 ネコバス えぇ〜、何だよお前ら。 ウエダ  お前が何なんだよ! ネコバス 俺はネコバスだっぺな。 シモムラ いやいや、ちょっと待て!その名前は流石にまずい。ちょっと、向こうで話そうか?(ソデに連れて行こうとする) ネコバス やだよ、ようやく出てきたのに何で出てかねぇといけねんだよ。ここで話せばよかんべ? ウエダ  分かったよ、とりあえずお前、名乗るな。 ネコバス いや、別に構わねぇっけど。 ナカヤマ で、何しに来たんですか? ネコバス 何しに来たって、お前ぇらが俺に用があんだっぺ?このネコバスに。 ウエダ  わー!名乗るなって!! ネコバス あ、悪りぃ。 シモムラ 用があるって言われても、私たちは君と面識がないぞ。 ネコバス いや、そりゃそうだけども、だって、(標識さして)ここ行きてぇんだろ?だったらこのネコバスに乗るほかねぇだろ。 ウエダ  うぉいっ!お前ワザとやってるだろ!! ネコバス あ、ばれた? ナカヤマ 乗る?乗るってどういうことですか? ネコバス だから、俺がその合流場所に連れて行ってやるってことだよ。 シモムラ しかし、肝心の乗り物が見当たらないが・・・。 ネコバス (ロープ状のものを取り出し)じゃーん!そして・・・(ウエダに)あ、こっち持っててくれっけ?(電車ごっこの形にして)じゃーん!! ウエダ  なめてんのか! シモムラ いや待て!もしやお前、テレポーターか? ネコバス そうだぁ。んでもエンジンさかかるのにちょっくら時間かかるからよ、その間一緒に(ロープ状のものを示し)コレで走ってもらう形になっちゃーんだけどさ。 ナカヤマ あれ?でも僕たちさっき敵やっつけましたよね? ウエダ  そういやそうだな、もう敵いねぇじゃん。 ネコバス 何言ってんだぁ、あんなのザコだよぉ。明日、敵の本隊がやってくっから。さっきのやつらの比じゃねぇぞ! ナカヤマ そんなぁ・・・。 シモムラ ま、そりゃそうだわな。 ウエダ  そんな簡単にいくわけねぇか。 ナカヤマ あれ?二人ともヤル気マンマンですね? ウエダ  俺たちの能力だって、使いようによっては役に立つって分かったからな。 シモムラ キミだってそうだろう?その能力のおかげで一命を取り留めたんだ。 ナカヤマ そうですよね。 シモムラ この世に役に立たない人間、能力なんてものはないんだ。 ウエダ  よし!じゃ、行くか。 ナカヤマ はい! シモムラ おう! ネコバス じゃ、乗ってくれっけ? ー三人、ネコバスのロープの中に入り、電車ごっこの要領でロープをもつ ウエダ  これ・・・何とかならねぇのか? ネコバス いやぁ、俺が触っているものに触っててもらわないと一緒に行けねぇからよ・・・。ええと、行き先は・・・。 ーネコバス、スケッチブックのページをめくる。 ー色々な行き先が書いてあるが、「合流場所」が出てこない ー仕方なく、マッキーを取り出して「合流場所」と書くが間違えて何度も訂正し、最後あきらめる。 シモムラ おい!字、間違ってないか? ネコバス いいんだぁ、こんなのどうせ雰囲気なんだからよ。 ウエダ  ホントかよ。 ナカヤマ 先行き不安ですね・・・。 シモムラ シモムラだ。 ナカヤマ ?どうしたんです?突然。 シモムラ いや、自己紹介がまだだったなと思ってな。シモムラ、時間早送りの能力者だ。 ウエダ  ウエダ、カレーにカビを生やす能力。 ナカヤマ ナカヤマです。ケツが硬くなる能力です。 ネコバス 俺ぁネコバス・・・。 ウエダ  お前はいいよ! ネコバス つれねぇなぁ・・・、んじゃ、いっくぞぉー。 ―BGM「光の天使(ローズマリー・バトラー)」(幻魔大戦) ーネコバスと3人、走り出す。徐々にスピードを上げ、舞台上を一周したらソデにはける ーちょっとの間のあと、テレポート音が鳴り響き、           (―幕―)