『事故物件』 作:伊佐場 武 【登場人物】 シミズ(清水澄人): ツチヤ(土屋宅真): モモカ(天城百日): ミヅキ(地村美月): キムラ(木村零子): クロガネ(黒金逝治): ホムラ(焔狐、式神): ―アパートの一室(夕方の薄暗い明かり) ―室内の一角に段ボールが積まれている ―シミズとツチヤの会話が聞こえる シミズ  すみません、無理言ってしまって。 ツチヤ  いえ、気になさらないでください。 シミズ  でも本当に助かりましたよ、昨日は有給取ってたんですが、急なクレームでどうしても抜けられなくなってしまって…。 ツチヤ  お忙しいんですね…、ええと…あ、こちらです。 ―カギの開錠音、続けてドアの開く音 ―ツチヤ登場 ツチヤ  (壁を探りながら)ええと…スイッチは…?…あ!ここだ! ―スイッチオン、部屋の明かり ツチヤ  ちゃんと電気きてますね。どうぞ。 ―シミズ、入ってくる ―ツチヤは入り口付近から極力動かない シミズ  はい。(部屋見渡して)…おお!やっぱり何もないと広々してますね。 ツチヤ  テレビとか家具とか置いていくとすぐ狭くなっちゃうんですけどね。 シミズ  あ、ちゃんと荷物も!昨日は本当にお手数掛けてしまってすみません。 ツチヤ  いやいや本当に気になさらないでください。お店の近くの物件ですから、引っ越し屋さんが来た時にちょっとだけ立ち会っただけなんで。 シミズ  そんなこと言って、本当はこの部屋でサボってたんじゃないですか? ツチヤ  やめてくださいよ、そんなことする勇気、私にはありませんよ。 シミズ  築浅で駅からも近いし…、本当にあんな家賃でいいんですか? ツチヤ  そりゃもう、住んでいただけるならこちらとしては…、というよりむしろお客様こそ本当に大丈夫なんですか? シミズ  え?あ!ああ、大丈夫ですよ、そういうの気にしないタイプですから。 ツチヤ  そうですか…、それじゃこちら、この部屋のカギになります。合鍵と合わせて二本お渡ししておきますね。 シミズ  (受け取り)はい、ありがとうございます。 ツチヤ  はい、それではこれで引き渡しとなりますが…、何かありますかね? シミズ  いや、今のところは特に。 ツチヤ  そうですか、それでは何かありましたらいつでもご連絡ください。失礼いたします。 ―ツチヤ、そそくさと帰る。 シミズ  はーい、お世話様です!…よーし、ようやく念願の一人暮らしだー!まずはマンガ…、いや、ゲームだな。テレビ台とかゲーミングチェアとか揃えて最高のゲーム環境を整えて、そのあとマンガ用の本棚だな…。 ―モモカ、登場するがシミズに気づき隠れる シミズ  …と、そんなことよりまずは荷解きするか、食べるところと寝るところを確保しないと…。 ―シミズ、段ボールをいくつか開ける シミズ  あれ?こっちじゃなくて…、こっちは…本とDVDか…、ん?こっちかな?…あれ?これって…(アルバム取り出して)…いつのだ??…あ、あれだ昔引っ越した時の…そういえばこれってこの辺りだったっけ?懐かしいな…、と、感傷に浸っている場合じゃないな…ええと…あ!これだこれだ、まずこれを台所に持っていかないとな。 ―シミズ、段ボールを持って奥の部屋にはける ―モモカ、シミズを見送るようにゆっくり登場 モモカ  新しい…人??困ったなぁ、もうすぐミヅキちゃん来るのに…、とりあえず向こうで待つか…。 ―モモカ、玄関のほうにはける ―シミズ戻ってきて、段ボールをいくつか開ける シミズ  あれ?おかしいな…、どこに入れたかな?…もしかして忘れてきちゃったかな、アレ。ないと困るんだよな…、(電話かける)…あ、もしもし?俺だけど、あのさ、ちょっと確認してほしいんだけど、俺がいた部屋に段ボール残ってない?…うん、二階の…、うん、ちょっと確認してもらっていい??…あー、うんそれそれ、…悪いんだけどさ…。 ―シミズ電話中にモモカとミヅキがこっそり登場 モモカ  ほらアレ、ね? ミヅキ  ほんとだ、やっと追い出せたのに。 モモカ  しかもよりによって今日だよ?本当最悪…。 ミヅキ  まぁ仕方ないけどね、私たちの都合なんて考えてもらえないんだから…。でも、まぁ大丈夫じゃない?普通の人っぽいし。 モモカ  ミヅキちゃんが気にしないなら別にいいけど…。 ミヅキ  それよりさ、(スマホ出して)駅前に新しくこんなのできたんだよ。 モモカ  ええ?何コレ??こんなのできたの?ていうかコレ何? ミヅキ  分かんない。今度一緒に見に行こうよ。 モモカ  いや…私は…。 シミズ  (振り向いて)ちょっとお前らウルサイ! モモカ  え? ミヅキ  え? シミズ  …。 モモカ  …。 ミヅキ  …。 シミズ  …(戻って)あ、ごめん。それでさ、その部屋にあった段ボール全部…。 モ/ミ  何だ電話か…。 ミヅキ  視えてるかと思った…。 モモカ  びっくりしたー。 ミヅキ  あ、そういえばこの前面白い子見つけたんだよ。 モモカ  面白い子?? ミヅキ  うん、なんかね…。 シミズ  (電話切って)いや、お前らだよ!そこの女二人! モモカ  ソコノオンナフタリ?? ミヅキ  ワタシタチノコトデスカ?? シミズ  何で急にカタコトになってんだよ。 ミヅキ  いや、あまりの出来事につい…。 モモカ  ていうか…え?何かリアクションおかしくない?? シミズ  何が? ミヅキ  状況分かってます? シミズ  分かってるよ。今日ここに引っ越してきて、キッチン用品の段ボールにサバの缶詰が入っていたから、食べようと思ったんだけど缶切りがなくて、あれ?確かフライパンとかと一緒に入れたはずだけど、もしかして送り忘れた?と思って実家に電話して確認したら案の定、送り忘れの段ボールがあったから、送ってもらう手続きを踏んでいたところ、お前らの会話がうるさくて怒って今に至っているところだよ! モモカ  …そ、そうだったんですね? ミヅキ  全部言ったな、この人。 モモカ  いや、そうじゃなくて、そういうことじゃなくて。 シミズ  そういうことじゃないってなんだよ。絶賛そういう状況だよ。 ミヅキ  いやいや、ほら本来この部屋にいるはずのないものが…ここに、ね? シミズ  何言ってんだよ、俺はちゃんと契約して今日からこの部屋の住人になったんだよ、むしろいるべき存在だろうが! モモカ  いやあなたじゃなくて私たち、こっち側! シミズ  お前らがどうかしたのか? ミヅキ  おかしいでしょ?ほら。 シミズ  何がだよ、服装のことか? モモカ  服装の話じゃない! ミヅキ  え?服、変かな?? モモカ  変じゃないから、大丈夫だから。 シミズ  まったく、何が言いたいんだよ。 モモカ  だから私たち!おかしいでしょ?私たちが今ここにいるの! シミズ  何で? モモカ  何で…って、…あなた今日ここに引っ越してきたんだよね? シミズ  そうだよ、そうだって言ったじゃん。 ミヅキ  なのに今、私たちがここにいるのっておかしくない?? シミズ  いやそりゃそうだけど、だってお前らどうせアレだろ?あのほら…。 ―チャイム シミズ  はーい(玄関に向かう) モモカ  いや、まだ話の途中!…ていうか、アレって何よ、え?もしかしてミヅキちゃんの知り合いとか? ミヅキ  今の会話の中に知り合い要素あった?そんなわけないじゃん。…ていうかもしかしてこっち側のヒトなのかな? モモカ  それは…ないんじゃないかな? ミヅキ  なんで? モモカ  だってホラ、実家に電話して荷物送ってもらう、とか言ってたじゃん。 ミヅキ  ああ、そういえば…、でもそれじゃあの受け入れの良さは一体? ―モモカとミヅキ雑談を続ける ―ソデから話し合いの声が聞こえてくる ―シミズ、クロガネ登場 シミズ  そうなんですね、だったら最初から言ってくれれば良かったのに。 クロガネ いやー、すいません。でも最初に言っても信じてもらえないことが多いので…。 シミズ  確かにそうかもしれませんね…、(二人を見て)ああ、アレですアレ。 クロガネ あ、どうも…あれ? モモカ  あれ?クロさんじゃん。 シミズ  クロさん? ミヅキ  あ!クロさんの知り合いだったんだその人。 クロガネ いや、そういうわけでは…。 シミズ  ちょっと待て!何?お前ら知り合いなの? モモカ  うん。 ミヅキ  そうだよ。 クロガネ 実は…はい。 シミズ  聞いてないよ。 クロガネ すいません、言ってませんでした。 シミズ  何だよ、だったらさっさと連れて行ってくれよ。 クロガネ え?あのー、えーと…、連れていく、とは? シミズ  だからそこの二人、そういうアレだろ? ミヅキ  そういうアレ? シミズ  仕事というか…、役割というか…。 モモカ  え? クロガネ 違います違います、私は今日、そういうので来たんじゃないんですよ。 シミズ  え?じゃあ何でココに? モモカ  いや、ちょっと待ってちょっと待って! シミズ  何だよ? モモカ  え?お兄さん何?何なの?? シミズ  何なの?ってなんだよ。今日ここに引っ越してきたこの部屋の住人だって言ってるだろ。 モモカ  そうじゃなくて…、あのさ、私たちが何だか分かってる? シミズ  知らねぇよ、今日引っ越してきたばっかりなんだから。 ミヅキ  いや、あの、そうじゃなくてさ…、何ていうか、私たちが何でここにいるのか?という…。ていうか、私たちがここにいるのに何でそんなに普通に話すすめてんの? シミズ  だってそういう部屋だって聞いてたもん。 ミヅキ  そういう部屋?? モモカ  聞いてた?? シミズ  うん。 ミヅキ  そういう部屋、とは?? モモカ  具体的には…何て? シミズ  だから…事故物件だって。 モモカ  え? ミヅキ  え? クロガネ え? シミズ  …。 モモカ  …え?知ってて住むことにしたの? ミヅキ  ちょっと頭おかしいんじゃないの? シミズ  何おう! ミヅキ  だって普通は…ねぇ…。 モモカ  うん、知ってたら住まないよねぇ…。 シミズ  うっせーな!別にいいじゃねーか! クロガネ あの…。 シミズ  何だよ!アンタも何か文句あるのか? クロガネ あ!いや文句ではなくて…ええと、…事故物件ってなんですか? ―間 モモカ  え?クロさん知らないの?? クロガネ ええ…、すみません…。 ミヅキ  別にあやまることではないけど…。 シミズ  事故物件ってのは、ま、ざっくり言うと幽霊が出る物件だよ。 クロガネ ほー、あ、そうなんですね? モモカ  いや、ざっくりしすぎなうえに間違ってるから。 シミズ  え?違うの?? モモカ  違うよ、事故物件て、何らかの理由で人が亡くなって、住むのにためらわれる部屋のことだよ。 三人   へー、そうなんだー…。 モモカ  全員知らなかったんかい! シミズ  え?じゃあ幽霊は?? モモカ  幽霊は関係ない。 シミズ  えぇ!?関係ないの?うわー騙された―、あの不動産屋め! モモカ  いや、騙してはいないと思うけど…。 シミズ  ん?え?じゃあお前たち誰だよ? ミヅキ  このタイミングで? シミズ  だって今までお前らのこと幽霊だと思ってたけどそうじゃないんだろ? ミヅキ  ああ…、いや、そうじゃないことは…ないのよ。 シミズ  は? モモカ  私たちは幽霊だよ。 シミズ  ウソつけ!さっき自分で言ったじゃねぇか!事故物件と幽霊は関係ないって!もうこれ以上騙されねーからな! モモカ  いや、誰も騙してなんかないから。関係はないけど、まったく出ないってワケではなくて…。 シミズ  え?何??どっちなの?でるの?出ないの??結局お前らは何なの?そしてクロちゃんは何しに来たの?クロちゃんは本当は何者なの?? モ/ミ  クロちゃん?? クロガネ え?あ、私のことですか? シミズ  さっきそう言われてたじゃんか。 ミヅキ  クロちゃんじゃなくて、クロさん、ね。 シミズ  どっちだって一緒だよ! クロガネ いや、クロちゃんはちょっと…、印象悪い…。 シミズ  何言ってるか分からないけど…、ああ、もう、それじゃ一度全員で自己紹介しよう。 三人   自己紹介? シミズ  だって俺お前らのこと何も知らないし、状況もごちゃごちゃしてきたし…、今、ここにいるので全員だよな?他に隠れてるやつとかいない?…大丈夫??隠れてペットとか飼ってない??…それじゃそこの女から。 モモカ  私から?私は天城百日(あまぎももか)、かつてこの部屋で死んだことのある地縛霊だよ。 シミズ  ここで死んだ…、あ!ていうことは君のおかげでココ、事故物件になってるってこと? モモカ  おかげって…、でも多分そうだと思う、私が死んだあとの住人、みんなスグに出ていってるし…。 シミズ  絶対そうだよ。なぁ? クロガネ え?そうなんですか…ねぇ…? シミズ  それで、死因は? モモカ  それがよく分かんないんだよね。 シミズ  え?何で??自分のことだろ? モモカ  うん、そうなんだけど…、気が付いたら死んでたし、死因知ろうにもこの部屋から出られないし。 ミヅキ  地縛霊だもんね。 モモカ  うん…、最初はね、あれ?これって、幽体離脱ってヤツ?とか思ってたのよ。なんか自分の姿が自分で見えてたし、何ていうか…ふわっとしてるし。 シミズ  ああ、宙に浮く感じで。 モモカ  宙に浮くっていうか、存在が浮いているっていうか…。 シミズ  何だ?存在が浮いてるって。え?何?宙に浮くんじゃないの?幽霊って。 ミヅキ  浮かないよ。 シミズ  え?浮かないの? モモカ  うん。 シミズ  本当に? モモカ  だって私たち、ホラ。 シミズ  うん、まぁ確かに地に足ついているけど…。 クロガネ いやー、さすがに浮くとか、無理でしょう。だってあなた浮けます?? シミズ  いや、俺は無理だよ、生きてる人間だし…。 クロガネ そんな、自分にできないことを他人にやれ、なんて…、ねぇ? モモカ  ひどい、パワハラだわ! ミヅキ  訴えてやる!! シミズ  パワハラではない!やめろ、コンプラ案件にしようとすんな!いや、俺は生きてる人間だから当然浮くことはできないけど、幽霊って、なんかこう、浮くイメージあるじゃん? モモカ  イメージのハナシされてもねぇ…、現にこうして浮けてないんだし。 シミズ  何だよガッカリだよ…、ガッカリ幽霊…。 ミヅキ  私たちが悪いみたいに言わないでよ、全般的な話なんだから。 シミズ  んー、ま、いいや。それじゃ次。 ミヅキ  次?? シミズ  自己紹介の続きだよ、やってただろ? ミヅキ  あ、そういえば…、私は地村美月(ちむらみづき)、モモカちゃんの友だちの浮遊霊だよ。 シミズ  浮遊霊…?…てことは宙に…? ミヅキ  浮きません! シミズ  何だよ、浮遊って言ってるのに、詐欺じゃん! ミヅキ  そんなこと私に言われても知らないわよ。 シミズ  でも浮遊霊てことは、ここに留まっているわけじゃないんだろう? ミヅキ  うん。 シミズ  その割になんか二人と親しげじゃないか? ミヅキ  なんかココ居心地がよくて、通っているうちにみんなと友達になっちゃったんだよ、ねー。 モ/ク  ねー。 シミズ  何だそりゃ?…じゃ、お前はこの部屋が事故物件であることとは関係ないんだな? ミヅキ  うん、無関係だよ。たぶん。 シミズ  なんだ…。 モモカ  何で残念そうなのよ。 シミズ  いや、別に…、それじゃ、次、クロちゃん。 クロガネ だからクロちゃんじゃないですって、私は黒金逝次(くろがねせいじ)、死神です。 シミズ  死神ね。 モモカ  え?クロさんって死神だったの? クロガネ そうですよ…、あれ?言ってませんでしたっけ?? モモカ  聞いてないよ、ねぇ? ミヅキ  うん。 クロガネ これは失礼いたしました。死神のクロガネです。 シミズ  え?何??お前らそんなに仲良くないの? ミヅキ  そんなことないよ。 クロガネ 実は…。 モモカ  いや、待って待って!良いから、超仲良いから! シミズ  だってクロちゃんの仕事知らなかったんだろ? モモカ  それは…そうだけど…。 ミヅキ  私たちそういうの気にしないタイプだから、クロさんも変なこと言わないで。 クロガネ すいません、ついうっかり…。 モ/ミ  まったく…。 シミズ  それじゃ、お前ら二人が幽霊で、クロちゃんが死神…っと。そんなところかな? モモカ  ちょっと! シミズ  何だよ。 モモカ  何だよ、じゃないよ。 ミヅキ  あなたの自己紹介は? シミズ  俺は別にいいだろう? モモカ  良くないよ、分かんないもん私たち、あなたのこと。 シミズ  何でだよ。 モ/ミ  いや、初対面!! シミズ  だってお前ら幽霊なんだろ? モモカ  幽霊ですが?? シミズ  幽霊だったらアレだろ?何か人の考えてることが分かる的な能力が…。 ミヅキ  いやそれは流石にどこ情報よ。 シミズ  あれ?なんかそういうイメージない? クロガネ またイメージトークですか? ミヅキ  あれじゃない?世の中、自分の思う通りじゃないと納得しないタイプ。 モモカ  うわ、めんどくさっ! シミズ  待て待て!そっちで勝手に盛り上がるな。そういうイメージあるだろ?なんか心霊スポットに行って、悪霊っぽいのに出会ってしまって、大急ぎで逃げるんだけれど、先回りされているかのように行く先々でそいつに遭遇して、まるで相手に心を読まれているような感じのそういう恐怖の…。 ミヅキ  そんなのただの偶然じゃないの? モモカ  そうだよ、悪霊からしたら、むしろ自分が行くところ行くところで、ことごとく人間に遭遇しちゃって迷惑してるかもしれないじゃん。 シミズ  なんで悪霊サイドの目線で語るんだよ。 モモカ  だって私たちも幽霊だもん。 ミヅキ  その悪霊だって、本当は悪くない悪霊かもしれないしね。 シミズ  悪くない悪霊とは?? クロガネ まあとにかく、死んで幽霊になったくらいで、宙に浮いたり、人の心が読めるようになったりなんかはしないってことですよ。死んで人の心が読めるようになるんだったら、無差別に人のこと祟ったりなんかしないでしょ? シミズ  うん、まぁ、そう言われればそうかもしれないな…。 ミヅキ  それは納得するんだ…。 モモカ  やっぱり死神だからかなぁ…。 クロガネ え?あれ?もしかして出ちゃってました??神々しさ。 モ/ミ  いや、それは全然…。 クロガネ えー…。 モモカ  そんなことより自己紹介! クロガネ そんなこと…。 シミズ  ああ、俺は清水澄人(しみずすみと)、今日ここに引っ越してきた普通の人間だ。 モモカ  地元はどこ? ミヅキ  趣味は? クロガネ 休日は何やってるんですか?? シミズ  合コンか!矢継ぎ早の質問するなよ。今までそういう流れじゃなかったじゃんか。 モモカ  だってコッチチームは元々知り合いだったから。 ミヅキ  改めて聞きたいこととかなかったし。 シミズ  クロちゃんが死神だってこと知らなかったくせに? クロガネ いいんです…、みんな私のことなんか興味ないんで…。 モモカ  違うって! ミヅキ  まさか死神とは思わなかったから…。 クロガネ それより質問の答えは? モモカ  立ち直り早いな…。 シミズ  えー、質問答えなきゃいけない感じ? クロガネ ええ、お互いを知るためにもできれば…。 シミズ  ええと、地元と、趣味と‥‥、なんだっけ? クロガネ 休日です、休日の話。 シミズ  ああ、そうだった…、地元はシウマイが美味しいところで、趣味はゲーム、休みの日は…、うーん、特に何かやるってワケでもないけど映画を観てることが多いかな…? クロガネ なるほど…。 ミヅキ  何だ。 シミズ  何だとはなんだ。 モモカ  いや、いまいち面白みに欠ける感じかな?と。 シミズ  うっせーな、別にいいだろうが、それよりお前ら…。 ―チャイム シミズ  はーい(玄関へ) モモカ  あれ?ちょっと! ミヅキ  毎回チャイムに対する反応が過剰じゃない? クロガネ え?毎回あれなんですか?チャイムなった瞬間、バッと玄関に向かってましたね。 モモカ  それよりクロさんて本当に死神なの? クロガネ はい、本当に死神です。 モモカ  そうなんだ…。 ミヅキ  ていうかクロさんていつもここに来てるけど大丈夫なの?死神ってヒマなの?? クロガネ いえ、ヒマではないですよ。むしろ最近は人手不足で下請けにお願いとかしてますからね。 モ/ミ  下請けって何? クロガネ でも、おかしいですね?私死神と名乗って記憶あるんですけどね? モモカ  勘違いじゃないの? クロガネ いや、特にミヅキさんには言ってるはずなんですよ。だってアレ渡してるじゃないですか? ミヅキ  アレって? クロガネ アレですよ、あの手鏡…。 ―会話の最中にキムラ、駆け込んできて、札のようなものを撒いている ―続いてシミズとツチヤが追いかけるように入ってくる キムラ  感じます感じます!この部屋に霊の気配を感じます! シミズ  おい!なんだアンタ急に!ちょっと、散らかすな!ツチヤさん、アンタが連れてきたんだろ?何とかしてくれよ! ツチヤ  すみません、すみません。あの、キムラさん。確かにお願いしましたけど、勝手に上がり込むのはダメですよ。ちゃんとお話ししてから…。 キムラ  悠長なこと言ってる場合ではありません!この部屋からは複数の霊の存在を感じます。 シミズ  知ってるよ、アレとアレだろ? モモカ  アレってひどくない? クロガネ あれ?私は数に入れられてなかったような…。 ミヅキ  だってクロさんは霊じゃないじゃない。 クロガネ あ、そうか。 キムラ  そうです、早くしないとあなたの身にも…。え?今、何て?? シミズ  いいからひとまず座れ! キムラ  いや、あの、ちょっと、今、今何て言いました? シミズ  だから座れって言ったんだよ。 キムラ  その前です。その前。 シミズ  その前…?なんか言ったっけ??…アレとアレってところか?? ミヅキ  アレって言うな! ツチヤ  アレって何ですか?? キムラ  もしかして…、視えているんですか?? シミズ  いいから、分かったから、一旦座って落ち着け。 キムラ  あ、はい…(座る)…、あの、ホントに視えてるんですか? シミズ  (片付けながら)何がだよ。 キムラ  あの…あそこにいるふたつの霊…。 ツチヤ  ひっ! シミズ  ふたつの霊?ああ、あの女二人か?? キムラ  女ふたり…? ツチヤ  ひぃっ!いるんですかいるんですかどこにいるんですか? キムラ  え?そんなにハッキリと視えているんですか?? シミズ  そりゃ見えてるよ。 ツチヤ  え?いるんですか?やっぱりいるんですか?本当にいるんですか? シミズ  ちょっとツチヤさんうるさい。 ツチヤ  ごめんなさい。うるさいですよね、ごめんなさい、帰った方がいいですよね?ごめんなさい。帰らせてもらってもよろしいですか?ごめんなさいぃぃ。 シミズ  よろしいワケねぇだろ。ちゃんと責任もってそこの散らかしたヤツと散らかしを行なったヤツを連れて帰ってくださいよ。 ツチヤ  そんなことで帰っていいなら、ハイ!今すぐに…。ほらキムラさんも片づけて、今日のところはこれで…。 ―ツチヤ、片付け始める。 モモカ  (札を拾って)何だろコレ? ミヅキ  (札を拾って)お札?かな?? クロガネ (札を拾って)どれどれ?…うーん、なるほど、悪霊退散のお札ですね。 ミヅキ  へー、そうなんだ。 モモカ  え?それって私たち触っても大丈夫なの?? クロガネ え?あ、ええ。大丈夫ですよ、だってお二人とも、悪霊じゃないでしょ? モモカ  うん…。 ミヅキ  多分そうだと思うけど…。 モモカ  でも、こういったのって、霊全般に効くんじゃないの? クロガネ まぁ普通はそうなんですけど、コレ、純度の高い霊力がこめられているようなんで悪霊にだけ、効くようになってるみたいです。あの人、相当チカラのある人なんじゃないですかね? モ/ミ  へー。 ―三人が札を持って話しているところにツチヤが片付けにくる。 ―札を見て驚くツチヤ ツチヤ  う、う、う…。 シミズ  ?どうしました?ツチヤさん。 モモカ  (近づいて)気分悪くなったのかな? ミヅキ  (近づいて)大丈夫ですかぁ? ツチヤ  ひ、ひぃぃ! シミズ  いや、どうしたんだよツチヤさん。 キムラ  こ、これは!? ツチヤ  ど、どうしたって…、お札が、お札が…。 モ/ミ  お札?? ツチヤ  お札が浮いているじゃないですか! キムラ  (印を組んで)そこにいるんですね? シミズ  え?どこ?どこ?? ツチヤ  そこですよ!目の前!!それとそれとそれ!お札が三枚浮いているじゃないですか! モモカ  え? ミヅキ  え? クロガネ あ! シミズ  あははは、何言ってんですかツチヤさん、びっくりさせないでくださいよ。 ツチヤ  え? シミズ  そこの三人が持ってるだけじゃないですか。 ツチヤ  そこの三人?? キムラ  三人??え?三人?? クロガネ あのー…。 シミズ  ん?どうしたクロちゃん。 キムラ  クロちゃん? ツチヤ  クロ…ちゃん…? クロガネ いや、あのですね…、実は私たちって、普通の人には視えないんですよ。 シミズ  何でだよ。 ミヅキ  幽霊とか死神とかってそういうものでしょ? モモカ  さっきまで散々イメージがどうこうとか言ってたくせに。 シミズ  だって俺には見えてるし。 ミヅキ  そもそもそれがおかしいんだけど…。 ツチヤ  あ、あの! シミズ  ん?何ですか?? ツチヤ  そ、そこに…いるんですか? シミズ  何が? ツチヤ  ゆゆゆ、幽霊が…。 シミズ  ん??…あ!はい。 ツチヤ  ひゃあー! ―ツチヤ、走って部屋から出る シミズ  え?おい、ツチヤさん。ツチヤさん!…行っちまった…片付けも途中だってのにまったく、…どうすんだよこの状況…。 キムラ  あの、ちょっとよろしいですか? シミズ  あんたは帰らせねぇからな!ちゃんと片づけろよ! キムラ  あ、ああ、それは…。 シミズ  ていうかあんた誰?? キムラ  申し遅れました、私、木村零子(きむられいこ)と申します。駆け出しの霊能力者ではありますが悪霊払いなどやらせていただいております。(名刺出す) シミズ  (受け取って)へー、霊能力者ねぇ…、あ、本当にいるんだ霊能力者って。 ミヅキ  霊能力者だってー。 モモカ  どうしよう、私たち成仏させられちゃうのかな? ミヅキ  え?したくないの??成仏。 クロガネ 成仏ってなんですか?? シミズ  いや、成仏知らねぇのかよ。 モモカ  クロさんて本当に死神なの? クロガネ 本当に死神ですよ。 ミヅキ  じゃあ何で成仏知らないのよ。 クロガネ 何でと言われましても、知らないものは知らないんで…。 シミズ  あれかな?ジャンルの違いとか? モモカ  ジャンルの違い?? シミズ  ほら、成仏って神様ではなく仏様側の言葉だろ? ミヅキ  確かに、成仏の仏はホトケだもんね。 クロガネ おお、なるほど、私は死神とはいえ神ですからね、そりゃホトケ側の言葉なんて知らなくても仕方ないというわけですよ。 モモカ  何でちょっとエラそうなのよ。 クロガネ あれ?もしかして出ちゃってました?神々しさ。 モ/ミ  全然。 シミズ  カケラも。 クロガネ カケラも、はやめてください、結構傷つくんで。 キムラ  あの、ちょっといいですか?ちょっといいですか?? シミズ  あ、ごめんなさい、何でしたっけ?霊能力者とか、そんな話してましたよね? キムラ  はい。それはそうなんですけど…、あの、あなた先ほど、三人いるっておっしゃってましたよね? シミズ  ええ。 キムラ  (何かを感じ取るように手をかざして)んー、おかしいな…、私には二人分の霊気しか感じ取れないんですが…。 シミズ  そりゃそうだよ、だって一人は幽霊じゃないもん。 キムラ  幽霊では…ない?? クロガネ はい、実は幽霊ではないんです。 モモカ  いや、聞こえないんでしょ? クロガネ あ、そうでした。 キムラ  え?幽霊じゃないってことは、そこにいるのは何なんですか? シミズ  死神だよ。 キムラ  死神!?え?死神??死神がいるんですか? シミズ  うん。 キムラ  そこに? シミズ  だからそうだって。 キムラ  (考え込む) モモカ  疑ってるのかな? ミヅキ  仕方ないよ、私たちだって今日死神って知ったくらいだし。 モモカ  でも、私たちのことは視えているみたいなのに何でクロさんのことは視えないのかな? クロガネ 霊が視えるのと、神が視えるのは違うんですよ。 シミズ  どういう理屈で? クロガネ 理屈はよく分かんないですけど、そういうものらしいんですよ。 ミヅキ  何だそりゃ。 クロガネ でもこのままだと話が進みませんからね、そこで…(メガネ取り出し)これです。 モモカ  何それ? クロガネ 死神の眼です。 ミヅキ  しにがみのめ?? クロガネ はい、これをそちらの方に。 シミズ  (受け取り)ああ…。あの、コレ。 キムラ  ん?何ですコレ? クロガネ とにかくかけてみてください。 シミズ  とにかくかけてくれってさ。 キムラ  え?あ、はい…。 ―キムラ、メガネをかける。以降、幽霊とクロガネの声と姿を認識可。 キムラ  これでいいですか? クロガネ どうもこんにちは。 キムラ  うわぁっ!え?誰??いつの間に?? クロガネ 死神のクロガネです。 キムラ  死神??何で…、あ、もしかしてお迎えが来た的なアレってことですか? クロガネ 違いますよ、ホラ、それ。 キムラ  ん?(メガネに気付いて)あ、コレ!? クロガネ そうです。それは死神の眼といって、死神と同じ世界が見えるようになる秘密道具です。それをかけたことによって、私の姿と声を認識できるようになったというわけです。 モモカ  え?そんな便利アイテム持ってたの? クロガネ 死神ですから。 ミヅキ  死神だから、という理由はよく分からないけれど…。 キムラ  へー、あなたが死神ですか…、へー…。 クロガネ あれ?もしかして出ちゃってました?神々しさ。 キムラ  いや、それは全然…。何かイメージ違う…。 クロガネ ひどい言われよう…。 モモカ  ま、クロさんだしねー。 ミヅキ  そうだねー。 クロガネ 追い打ちかけないで。 キムラ  あれ?でも…あれ?(メガネをかけたり外したり) シミズ  どうした? キムラ  何か…霊の姿や声もはっきり分かるようになったような…。 モ/ミ  え? シミズ  そうなの?ていうかこっちの二人のこと、ちゃんと視えてなかったってこと? キムラ  はい、なんかぼんやりと人の形に視えてて、声も雑音交じりだったのに、今はくっきりはっきり分かります。 クロガネ そりゃ死神の眼ですからね、霊の姿や声が分からないと色々不都合があるじゃないですか。 キムラ  それは…確かに…。 シミズ  あれ?でもさ…。 クロガネ 何です? シミズ  そのメガネでクロちゃんの姿とかこいつらの姿がはっきり視えるようになったのは分かるけど、何で声まで聞こえるようになってんの?? クロガネ さぁ…? シミズ  さぁ?って、あんたが出してきたアイテムだろうが! モモカ  あれじゃない?ほら、目は口ほどにモノを言うっていうから…。 シミズ  言うから? ミヅキ  だから口ほどにモノを言う目が見えるようになったんだから声も聞こえるようになってもおかしくない…と。 シミズ  いや、全然分かんない。 クロガネ それはさすがにおかしいですよね? シミズ  ああ。 モ/ミ  ちょっと! クロガネ 何です? モモカ  フォローしてやったのになんでクロさんが否定すんのよ! クロガネ え? ミヅキ  クロさんが困ってそうだったからこじつけ感たっぷりだったのに何とか理由っぽいこと言ったのに。 クロガネ ああ…、すみません。 キムラ  結局仕組みは分からないってことですかね? クロガネ まぁ、でもホラ、私死神ですし。 シミズ  その一言で何でも片付くと思ったら大間違いだからな。 キムラ  なるほど。 モモカ  納得したね。 シミズ  何でだよ! キムラ  それじゃ、まぁとりあえず(札を撒きはじめる) シミズ  (ストール的な何かを引っ張って)待てコラ! キムラ  ぐえっ…、何ですか? シミズ  何ですかじゃねーわ!散らかすなよ! キムラ  あ!いえ、散らかしてるんじゃないんです。この札を撒くことでこの部屋に結界を作り出して、霊がこの部屋から出られないようにしてるんですよ。 モモカ  え?そうなの?? ミヅキ  ホントだ、出られないよー。 クロガネ なるほど、そういう効果があるんですね。 キムラ  はい、それでは(札を撒き始める) シミズ  (引っ張って止めて)いや待てよ! キムラ  ぐえっ…、いや、何ですか? シミズ  だから散らかすなよ。 キムラ  だから散らかしてるんじゃなくて結界張ってるんですって。 シミズ  そんなこと知るかよ、結果的に散らかされてるんだからこっちは。 キムラ  いや、だってほら…コレとコレ。 モモカ  コレじゃないわ! キムラ  いいんですか?霊がいるのに。そのままでいいんですか? シミズ  いいよ別に。 モモカ  え? ミヅキ  え? クロガネ えぇ!? キムラ  そうでしょう?霊と一緒になんて…、今なんて言いました?? シミズ  だから別にいいって。 キムラ  え?何…、え?だって霊…え?どういうこと?? シミズ  そういう部屋って聞いてたから別にそのままでも構わないって言ってんだよ。 キムラ  そういう部屋、とは? モモカ  事故物件だって…。 キムラ  事故物件…、え?知ってて住むことにしたんですか?バカじゃないの?? シミズ  何おぅ! ミヅキ  やっぱりそういう反応になるよね? クロガネ あ、でも事故物件と幽霊って関係なかったんじゃありませんでしたっけ? キムラ  え? シミズ  まぁ結果的にはな。 クロガネ 結果的に、とは? シミズ  いやだって俺は幽霊が出る部屋だと思って住むことにしたわけだから、今さら幽霊と関係があろうがなかろうがそこは別に問題ないわけよ。 クロガネ なるほど…。 キムラ  え?事故物件と幽霊って関係ないの? モモカ  あんたもか! シミズ  ほらー、事故物件て聞くと大体みんな幽霊が出る部屋だと思うんだって! キムラ  ん?それじゃこの人たち幽霊じゃないってこと? ミヅキ  やった。そのクダリもうやったから。 モモカ  私たちは幽霊だよ。 クロガネ まぁ私は幽霊じゃないですけどね。 キムラ  だって事故物件と幽霊は関係ないんでしょう? モモカ  それはそうなんだけど…、ああ、もう!ていうかアナタ、「感じます」とか言って自分からここに入ってきたんでしょ? キムラ  あ!そういえば…、じゃ、いいのか…それじゃ(札撒く) シミズ  (止めて)だからやめろって! キムラ  ぐぇ!…あの、さっきからココ引っ張るのやめていただけません?首しまっちゃうんで。 シミズ  お前いいかげんにしろよ、散らかすなって言ってるだろうがよ! キムラ  だって幽霊が…。 シミズ  だからそれは織り込み済みなんだって。 キムラ  いやでも…。 シミズ  大体アンタは何でココにやってきたんだよ。流しで悪霊払いでもやってんのか? クロガネ 流しで悪霊払い?? ミヅキ  悪霊流し…?精霊流しみたいなもの?? モモカ  精霊流しってそういうもんじゃないと思うけど。 キムラ  そうじゃなくて私は不動産屋の人に頼まれて…。 シミズ  ツチヤの野郎の仕業か!ったくアイツはどこに行ったんだよ。 クロガネ ツチヤさんの評価が下がる一方…。 キムラ  あの…連れてきましょうか? シミズ  え?誰を?? キムラ  ツチヤさん、不動産屋さんを…。 シミズ  どうやって?? キムラ  実は私、悪霊払いなんてやってるんですが、陰陽師の家系なんです。 ミヅキ  どうしたんですか?急に身の上話を始めて…。 クロガネ 陰陽師というと…、安倍晴明のアレですか? モモカ  あ、クロさん陰陽師は知ってるんだ。 クロガネ ええ、一応神ですからね…、アレ、出ちゃってました?神々し…。 モモカ  全然…。 シミズ  それで陰陽師がどうしたって? キムラ  だからこんなことが出来ちゃったりするんですよ…出でよ、ホムラギツネ! シミズ  ホムラギツネ??もしかして…。 ―キムラ、ヒトガタを取り出してソデに放る ―ボン、という音の後、ケモ耳としっぽのついたホムラ登場 ホムラ  こーん!お呼びでしょうかレイコ様。 キムラ  ええ、今から…。 シミズ  (割り込んで)チェンジで! キムラ  え? ホムラ  は? シミズ  チェンジで。 ホムラ  チェンジ?? キムラ  一体何を…? シミズ  お前ふざけんなよ、思ってたのと違うじゃねーか! ホムラ  何が? ミヅキ  大体今までもあなたが思っていたのと違うものばっかりだったじゃん。 モモカ  むしろあなたの固定観念を改めるべきよ。 シミズ  いやそうかもしれないけどコレはだめだよ キムラ  どこが? シミズ  だってそうだろう?こういう場合って普通は擬人化されたキツネのケモ耳少女が出てくるもんだろーが! ミヅキ  いや、出てんじゃん、ねぇ? モモカ  そうだよ、擬人化されたキツネじゃんか。 シミズ  足りてない! キムラ  ん? ホムラ  何が? シミズ  その…なんていうか…オブラートに包んだ言い方をすれば…そう、若さが足りてない! クロガネ いや包めてないです、突き破ってますよ、オブラート。 ホムラ  何言ってるんですか、私コレでも十二才ですよ。 クロガネ 十二才!? モモカ  若―い。 ミヅキ  十二才なら少女じゃん、完全に。 ホムラ  ええ、完全に少女です。 シミズ  (スマホ出して)ヘイシリ、キツネの年齢、人間換算。 ホムラ  やめて!十二才は十二才だから!人間にした場合とか関係ないから!十二才の少女だから!! モモカ  そうだよこんなにかわいいんだし。 ミヅキ  そもそも女の人に年齢聞くのは失礼ですよ! シミズ  女かもしれないけどヒトではないだろうが。 キムラ  まぁまぁ、今、呼び出せるの、この子だけだから。 シミズ  ええー、何だよそれ、ふざけんなよ…。 キムラ  じゃ、とりあえず、あいさつ! ホムラ  はい!ワタシ、焔狐(ほむらぎつね)のホムラと申します。レイコ様の式神やってます。 モモカ  ホムラちゃんね。 ミヅキ  よろしくね。 ホムラ  はい。 シミズ  キムラとホムラで名前もカブってるし…。 ホムラ  うるさいなぁ…。 キムラ  とにかくホムラ!不動産屋のツチヤさんをつれてきて。 ホムラ  はい! ―ホムラ、行かない ミヅキ  ん? モモカ  どうしたの? ホムラ  あ、いや…。 クロガネ 早く行ったほうがいいんじゃないですか? ホムラ  そうなんですけど…、あの…。 キムラ  何? ホムラ  いや、あの…私、そのツチヤって人知らない…。 キムラ  え? シミズ  そりゃそうだろ、今出てきたんだし。 キムラ  あ、そうか…。 ホムラ  何か痕跡のあるものとかないですかね? キムラ  えっと…何かあります?痕跡のあるもの。 シミズ  いや、ねぇよ。何だよ痕跡のあるものって。 ホムラ  そうですね、できれば体の一部とかあればいいんですが…、なければその人が持っていたものとか…。 クロガネ 何かありますかねぇ…。 シミズ  うーん…、あ!コレとかどうかな? ―シミズ、カギを取り出す モモカ  カギ?? ミヅキ  何の?? シミズ  この部屋の。 モモカ  この部屋? キムラ  あの、ツチヤさんのではなくて?? シミズ  違うよ。 クロガネ それじゃだめなんじゃないですかね? キムラ  ええ。 シミズ  いや、確かにあの人のものではないけれど、ついさっき渡されたものだから、何かこれについたニオイ的な何かが痕跡にならないかな?って思って。 キムラ  ええー?…大丈夫そう?? ホムラ  分かんないけど、とりあえずやってみます。 キムラ  うん、それじゃカギ、お借りしてもよいですか? シミズ  ああ、それじゃ合鍵を一本…。 ―シミズ、合鍵を一本渡す。 キムラ  はい、じゃ、よろしくね。 ホムラ  かしこまりました、こーん! ―ホムラ、カギを受け取ってはける キムラ  ふぅ…。 シミズ  それじゃ待ってる間ヒマだしジェンガやろーぜ! 三人   いえーい! キムラ  え?いや待って!何この急激なパリピモード。 モモカ  だってやることないし…。 ミヅキ  私ジェンガやったことなーい。 クロガネ ジェンガってなんですか? モモカ  え?クロさんジェンガ知らないの? クロガネ はい、死神なもので。 ミヅキ  死神関係なくない? シミズ  クロちゃんはホント何も知らねーよな。 四人   はははは…。 キムラ  いや、盛り上がるな!何だこの流れ?? シミズ  しょうがねーじゃん、このままあの女狐帰って来るまで無言だと気まずいだろ? キムラ  女狐っていうのやめてもらっていいですか? シミズ  間違ってはいないだろう?キツネの女なんだから。 モモカ  間違ってはいないけど印象悪いよね? ミヅキ  悪口にしかきこえない。 キムラ  いやそれよりもあなた. シミズ  ん?俺?? キムラ  悪いことはいいません、ここにいる幽霊たちを除霊すべきです。 モモカ  え? シミズ  何で? キムラ  幽霊というのはですね、生きている人間に悪い影響を与えるものなんです。 シミズ  そうなの? モモカ  さぁ? ミヅキ  しらなーい。 シミズ  知らないってよ。 キムラ  そういうもんなんです。ねぇ、死神さん? クロガネ はぁ…そうなんですかね? キムラ  いや、何で知らねーんだよ! シミズ  クロちゃんはホント何も知らねーよな? 四人   ははは…。 キムラ  何だこれ?さっき見た光景だよ、デジャヴか?いやあるでしょ?そういう話。 クロガネ まぁ確かに不運に見舞われるとか、寿命が縮むとか言われることはあるようですけど…。 キムラ  ほら見たことか!やっぱりそうじゃないか! モモカ  何かキャラ変わってきてない? クロガネ でもそういう統計があるわけでもありませんし、ただの偶然かもしれませんからね。 シミズ  何だ?クロちゃんて意外と現実的なんだな? ミヅキ  存在は非現実的なのにね。 クロガネ ま、これでもお役所勤めですからね。 モモカ  死神って公務員なの? キムラ  でも、でも、だってもし本当にそれが原因でよくないことが起こる可能性があるんだったら、不安はなくしたほうが…。 シミズ  お前らはどうなんだ? モモカ  え? ミヅキ  私たち? シミズ  成仏だか除霊だか知らないけれど、ここを離れたいと思っているのか? ミヅキ  私は…そうだな?…どっちでもいいけど、この場所を気に入っているし、モモカちゃんと離れることになるっていうならこのままのほうがいいかな? シミズ  お前は? モモカ  私は…まだ離れたくない…。 ミヅキ  モモカちゃん…。 クロガネ そうですね、モモカさんは…。 シミズ  そういうこった。 キムラ  え? モモカ  え? シミズ  こいつらはここを離れたくないと思っていて、俺は別にそれでも構わないと思っている。だったら何も問題なんかないだろう? キムラ  ですが…。 シミズ  キムラさんにとっちゃ正しい行動なんだろうし、それが普通なのかもしれない。だからキムラさんが間違っているとは言わないけれど、俺たちは俺たちで今のままでいいと思ってるんだから、これはこれでいいんだよ。 キムラ  …。 シミズ  それにさ、 キムラ  何ですか? シミズ  契約して住むことにしたとはいえ、俺はこいつらよりも後に入ってきた人間だ。元々いたやつらを自分の都合で追い出すなんて勝手がすぎると思わないか? クロガネ まぁ、大家さんからしたら迷惑な話ですけどね。 ミズキ  確かに…。 シミズ  だから表面上は俺が住むことにするんだよ。そうすれば誰も困らなくなるだろう? クロガネ おお、なるほど。 キムラ  でも、だけど本当に何か悪いことが起こったとしたら、その時はどうするんですか? モモカ  その時は…、やっぱり…。 シミズ  あのな、たとえ人間同士でも、一緒に暮らすとなると色々と不都合が出ることってあるんだよ。 ミヅキ  どうしたの?急に。 クロガネ なるほど、相手が幽霊だろうが生きている人間だろうがトラブルになる時はなる。と、そういうことですか? シミズ  お?クロちゃん珍しく冴えているな。 クロガネ え?そうですか?死神とはいえ神ですからね、やっぱり神々しさが…。 四人   出てない! クロガネ そんなにハッキリ言わなくても…。 ミヅキ  つまり…どういうこと?? モモカ  つまり…ここにいてもいいってこと?? シミズ  ああ、多少の不便はお互い様だろ? クロガネ みんながほんの少しの不便を受け入れることで、みんなが幸せに生きていけるようになる…、多様性ってやつですね? シミズ  そうそう…、いやクロちゃん本当に急にどうした?? モモカ  クロさんが賢いキャラに…。 ミヅキ  こっち側のひとだと思ってたのに…。 クロガネ どういうことですか?? キムラ  …分かりました。でも、私は注意しましたからね。 シミズ  分かってるよ。その気持ちはありがたく受け取っておく。…つーわけで、ジェンガしよーぜ! 四人   いえーい! キムラ  あの…、そんなにジェンガやりたいんですか? シミズ  いや…。 ミヅキ  別に…。 モモカ  それほどやりたいわけでは…。 クロガネ ジェンガってなんですか? キムラ  何で訳も分からず盛り上がってんですか? シミズ  クロちゃんはやっぱり何も知らねーよな。 四人   ははは…。 ミヅキ  ていうかキムラさんてまだ帰らないの? モモカ  そういえば…、いつまでここにいるんです? キムラ  いや、私もさっさと帰りたいんだけど式神がまだ…。 クロガネ あ、そういえば。 ミヅキ  やっぱりカギじゃ見つけられなかったんじゃないの? モモカ  そうなるとキムラさんもずっとここにいることに? キムラ  そんなワケないじゃないですか。 シミズ  (ジェンガの準備しながら)家賃は折半だからな! キムラ  住まないから!見つからなかったらちゃんと戻ってくるから。ホムラは戻ってくるタイプの子だから。 クロガネ 子っていう感じでもなかったですけどね。 シミズ  それよりさっさとジェンガはじめようぜ。 四人   いえーい! キムラ  やっぱりやるんだ。 ―そこに、ツチヤを連れたホムラが帰ってくる ツチヤ  な、なんだこれ?体が勝手に!?だ、だれか、誰か助けてー! ホムラ  まったく騒がしいなぁー、それじゃ、いけー! ツチヤ  うわー! ―ホムラ、ツチヤを部屋に投げ込む ―ツチヤ、ジェンガのあるところに投げ込まれジェンガを倒す。 五人   あー! ホムラ  ただいま戻りましたー…、どうしたんですか? ツチヤ  いてて…、ここは…? シミズ  ツチヤてめー! ツチヤ  え?あれ?シミズさん??ということはココは…。 モモカ  見つけられたんだ。 ホムラ  はい。 クロガネ やはり痕跡が残ってて…。 ホムラ  いや、それはちょっと微妙だったので、カギに残っていた臭いを追って。 ミヅキ  臭い? ホムラ  はい、キツネも犬と同じで嗅覚が優れていますので、臭いで探知したというわけです。 モモカ  式神呼んだ意味…。 キムラ  ツチヤさん、どこ行ってたんですか? ツチヤ  キムラさん!?ということはやっぱり!きゃー! シミズ  うるせーわ!てめーよくもジェンガを崩してくれたな! ツチヤ  すみません、すみません。ていうか私のせいじゃないんですよ。 シミズ  何言ってやがんだ、どこをどうしらばっくれたらお前のせいじゃなくなるんだよ。 ツチヤ  いや、その、信じてもらえないかもしれませんが…体が勝手に動いて…。 ホムラ  私が連れてきたんだよ。 ツチヤ  これはやっぱり、この部屋の幽霊の呪い的ななにかによって…。 ミヅキ  ひどーい、私たちのせいじゃないよね? モモカ  ホムラちゃんが連れてきたって言ってたじゃん。 クロガネ まぁ、ツチヤさんには見えてないですからね。 ホムラ  見えてない? クロガネ ええ、私たちのことが。 ミヅキ  あ、そっか。 モモカ  だったらアレ使えばいいんじゃない? クロガネ あれ、とは? モモカ  ほら死神の…。 キムラ  ああ、(メガネ差して)これ? クロガネ ああ、私それひとつしか持ってないんですよ。 シミズ  ええ?それじゃどうするよ。 ツチヤ  あのー、誰と話してるんですか? キムラ  私が借りているコレを渡せばいいんじゃないですか? クロガネ でもそうしたら私とキムラさんが話せなくなりますよ? ツチヤ  あの、誰と…。 シミズ  別にクロちゃんと話せなくてもいいんじゃねぇか? モモカ  そうだね。 ミヅキ  必要ないしね。 クロガネ ひどい…。 ツチヤ  誰と話してるんですか! シミズ  うるせーな!少し待ってろよ! キムラ  いま、ツチヤさんのことで話し合ってるんだから。 ツチヤ  え?私のこと…? ホムラ  あの…、何の話してるんですか? モモカ  あのね、ツチヤさん、私たちのこと見えなくて、声も聞こえないからどうしようって話しで…。 ホムラ  何だそんなことですか、だったらコレ、使ってください。 ―ホムラ、キツネの耳のカチューシャを取り出す ミヅキ  何それー。 モモカ  かわいー。 ホムラ  ケモノの耳、ケモ耳です。 シミズ  それは見ればわかるよ。それをどうしろと? ホムラ  それをつけると私たちの世界を感じることができるようになる式神の秘密道具です。 モモカ  聞いたことがある説明…。 クロガネ なるほど、ケモノはいてもノケモノはいなくなる感じのアレですね。 ミヅキ  ?よく分かんないけど…。 キムラ  へー、そんなの持ってたんだ。 ホムラ  まぁ、レイコ様には必要ないものですからね。 シミズ  そうか、(取ってツチヤに)はい。 ツチヤ  え?あ、何ですか? シミズ  これつけて。 ツチヤ  な、何でです?? シミズ  いいから、ホラ。ジェンガ崩した罰ゲームだよ。 ツチヤ  ええ…、はい…。 ―ツチヤ、耳つける。(人外チームの姿と声を感じることができるようになる) クロガネ どうもー。 ツチヤ  うわー!え?いつの間に? ホムラ  ずっといたよ、ねぇ? クロガネ はい。 ツチヤ  ずっと…、ということはもしかして、幽霊!? ホムラ  違うよ。 クロガネ 違いますよ。 ツチヤ  きゃ…、え? シミズ  ああ、そいつらは幽霊じゃないな。 ミヅキ  幽霊は、私と…。 モモカ  私だよ。 ツチヤ  あ、何だ…。 キムラ  どうしたんですか急に。 ツチヤ  いや、なんか思っていたより怖くないなって思って。そちらのお二人は幽霊ですらないし。 クロガネ 幽霊じゃないから大丈夫というのもよくわかりませんが…。 ツチヤ  あれ?でもどうして急に視えるように…。は!もしかして私の中に眠る強大な力が目覚めてその影響で…。 ホムラ  (ケモ耳掴んで)これ、これの効果。 ツチヤ  ん?これ?? ホムラ  そう、ほら(耳とる) ツチヤ  あれ?消えた。 ホムラ  で、こう(つける) ツチヤ  あ、出てきた。へー、面白いですね。あれ?でも…。 ミヅキ  どうかした? ツチヤ  これつけて声が聞こえるようになるのは分かるけど、なんで姿が見えるように? シミズ  その作り物の耳で声が聞こえるようになるってのもおかしな話だけどな。 ミヅキ  あれじゃない?壁に耳あり障子に目ありっていうから…。 モモカ  大丈夫?ミヅキちゃん。その説明でちゃんと私たちの納得できるゴールにたどり着ける? キムラ  障子にメアリー…。 クロガネ なんかちょっと言い方違いませんでした? キムラ  いえいえ、そんなことないです。 ツチヤ  え?どうしてこれで…。 ホムラ  耳という字を漢字で書くと(空中に書いて)こういう漢字じゃないですか。 シミズ  ん?あ、ああ、なんとなくわかるけど。 ホムラ  耳のこの、飛び出した部分を無くすと、「目」という漢字になるでしょ? ミヅキ  え?ちょっと待って、何て? モモカ  耳の、飛び出した部分? キムラ  ああ、こういうことかな? ―キムラ、全員を集めて、お札の裏に字を書く キムラ  ほら「耳」ってこういう形で、ここの部分をなくすと、「目」という漢字に…。 クロガネ ああ! モモカ  あ、そういうことね。 ミヅキ  確かに。 シミズ  で?それがどうしたって? ホムラ  だからです。 ツチヤ  だから?とは? ホムラ  だから、耳という漢字の中には目という漢字の要素も含まれているから、耳をつけると視ることもできるようになるってことなんです。 シミズ  これは…さすがに…。 キムラ  こじつけにも程がある…。 四人   (モモカ、ミヅキ、クロガネ、ツチヤの四人)なるほど! シミズ  納得すんのかよお前らは! モモカ  だって、ほら、漢字の…。 ミヅキ  この四か所をとると…。 ツチヤ  もう完全に「目」でしたよね。 シミズ  いや、もうツチヤさんがそれでいいならいいけど…。 ホムラ  で?これからどうすんの? ミヅキ  これからって?? ホムラ  わざわざ私たちの姿を見えるようにしたってことは何か理由があるってことですよね? シミズ  いや、別に…。 ホムラ  別に? シミズ  だってツチヤさん、幽霊が視えてないとうるせーんだもん。 キムラ  それは、確かに。 ツチヤ  それじゃ、視えるついでにちょっと質問してもいいですか? ホムラ  ん?何?? ツチヤ  あなたたち、この部屋に棲み付いているんですよね? モモカ  え?あ、私はそうだけど…。 ミヅキ  私は違うよ、モモカちゃんの友達ってだけの浮遊霊。 クロガネ 私もただの死神ですから。 ツチヤ  し、死神? ホムラ  私はレイコ様の式神です。 ツチヤ  レイコ様? キムラ  私です。 ツチヤ  あ、キムラさん。そうか…、ま、それは置いておいて。じゃあ今ここに棲み付いている幽霊はあなただけ、なんですね? モモカ  うん。 ツチヤ  それじゃ、キムラさん、やっちゃってください! キムラ  え?何を?? ツチヤ  何をって、除霊ですよ除霊。そのために呼んだんじゃないですか。 クロガネ ああ、その話無くなりましたよ。 ツチヤ  無くなった!? キムラ  ええ。 ツチヤ  え?いや、何で?? ミヅキ  多様性だよ。 ツチヤ  多様性?? モモカ  多様性っていうのはね、異なる特徴を持つひとが共に存在することで英語で言うとダイバーシティ…。 ツチヤ  いや、多様性の説明は別にどうでもいいです。え?だって幽霊がいるんですよ。 シミズ  ああ。 ツチヤ  だったら、ほら、除霊…。 シミズ  こいつがまだここに居たいって言ってんだよ。 ツチヤ  は? シミズ  居たいって言ってるんだから居させてやりゃいいじゃねぇか。 ツチヤ  えー、それじゃこの部屋ずっと事故物件ってことじゃないですかー。 キムラ  あ、事故物件と幽霊って関係ないらしいですよ。 ツチヤ  え?関係ないの?? モモカ  お前もか!なんでみんな知らないんだよ! ミヅキ  ていうかあなたが知らないのはダメでしょう?職業的に。 ツチヤ  すいません…。…(モモカに)あの…ひとつ聞いてもいいですか? モモカ  私に?なんですか? ツチヤ  この部屋に棲み付いているってことは、何かこの場所に関する未練があるんですよね? モモカ  え? シミズ  ツチヤてめー!未練を解消させて成仏させる気だな! ツチヤ  いや、それはいいじゃないですか、悪いことじゃないですよね??無理やり追い出すわけではないんですから。 シミズ  ちっ…。 ツチヤ  えぇ、何で?? キムラ  それで、何か未練があるんですか? モモカ  うん、この部屋ってわけじゃないんだけど…。 ミヅキ  モモカちゃんはね、好きな男の子と会いたいんだよね? モモカ  ちょっと、ミヅキちゃん! ホムラ  何々?恋バナー? キムラ  こら、ホムラったら。 モモカ  違うの、そういうのじゃなくて…。 クロガネ モモカさんは約束を果たしたいんですよ。 ホムラ  約束? モモカ  私ね、生きてた頃にある男の子に助けてもらったことがあって。 シミズ  助けてもらった…? ミヅキ  その子にお礼をするって言ったんだけど、その後、結局会えないままになっちゃったんだよね。 モモカ  うん、約束してた日に今度は体調崩して行けなくなっちゃって。 キムラ  その子の名前とかって分からないんですか? モモカ  すぐ会えると思ってたから確認しなかったの。 キムラ  そっか…。 クロガネ なので私とミヅキさんでその男の子のことを探すことにしたというワケです。 シミズ  え?そうなの??そういう理由でクロちゃんはここにいたの? クロガネ そうですよ。 ミヅキ  今日は月一回の報告会の日だったんだよ。 ツチヤ  報告会!?そんなのやってたんですか?勝手に? モモカ  まぁ報告会の日以外も二人は来てたけどね。 ミヅキ  私は浮遊霊だから街中を探して、 クロガネ そして私は死神ということを活かして、死んだ人の中に該当者がいないかを探しているんです。 モモカ  あ!そうか、クロさん死神だから死んだ人を調べてたんだ。 クロガネ そうですよ、だからお二人とも私が死神だと理解していると思ってたんですけど…。 キムラ  え?でも名前も分からないのにどうやって探してるんですか? クロガネ これです。 ―クロガネとミヅキ、手鏡を出す。 ク/ミ  じゃーん。 キムラ  それは? クロガネ 浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)です。 ツチヤ  じょうはりのかがみ? ミヅキ  なんかね、閻魔様が使う人間の業を見るための鏡なんだって。 シミズ  え?手鏡なの?? クロガネ 最新の技術で小型化に成功しました。 ミヅキ  これを使って手あたり次第探してるんだけど見つからなくてさ。 ホムラ  これはまた、地道な方法で探してるんだねー。 クロガネ モモカさんすみません。今回も収穫なしでした。 モモカ  ううん、大丈夫だよ。さすがにもうこの辺りには住んでないのかもしれないし、二十年も前のことだから。 四人   (シミズ、キムラ、ホムラ、ツチヤ)二十年前? ツチヤ  え?二十年前の男の子をお二人で探してるんですか? キムラ  そりゃ見つからないですよ。 シミズ  二十年前か…。 ミヅキ  皆さんは何か心当たりとかないですかね? キムラ  私は分からないな…、ここの地域に来たのも今日が初めてだし…。 ツチヤ  私も最近異動があってこの近くの事務所に来るようになったので、この辺りのことは正直疎いんですよね。 ミヅキ  そっか…。 クロガネ シミズさんは? シミズ  うーん、二十年前というと、多分だけど俺、このあたりに住んでたな…。 モモカ  え? ミヅキ  本当に? シミズ  ああ、でもちょっとの間だけだったからなぁ…。 ホムラ  ちょっと、ってどのくらい? シミズ  確か一カ月くらいだったかな? ツチヤ  いや短くないですか? シミズ  色々あったんだよ、あの頃。それでまぁ、その頃の知り合いとかも特に連絡取合ってないし、俺自身、そういった人助けみたいなことした覚えもないから、俺も心当たりはないな。 ホムラ  なあんだ シミズ  なんだとはなんだ! ミヅキ  やっぱり今回も収穫なしかぁ モモカ  ごめんね、私のために…。 クロガネ いや、私もミヅキさんも好きでやってることですから気にしないでください。 モモカ  うん…。 ―間 シミズ  ああ、もう!引っ越ししたばっかりなのに暗い雰囲気になるんじゃねぇよ!お前ら、コレから引っ越しパーティーを始めるから手伝え! 六人   引っ越しパーティー? シミズ  ああ、俺がココに来たお祝いに俺がココでパーティーを行なう。 ホムラ  何だそりゃ? ミヅキ  あの…。 シミズ  なんだよ? ミヅキ  友達とかいないんですか? シミズ  は? モモカ  ミヅキちゃんだめだよ、本当のことを言うとひとは傷つくんだよ? シミズ  本当のことってなんだよ!いるわ!友達百人いるわ! キムラ  このSNSの時代にフォロワー百人ですか…。 シミズ  フォロワーじゃねぇよ、友達だっての。 クロガネ 大丈夫ですよ、私も ホムラ  私も ミヅキ  私も 三人   みんなあなたのことを友達だって思ってますから。 シミズ  やめろ!かわいそうなやつとして俺を扱うな!大体お前ら三人とも生きた人間じゃないだろうが! ツチヤ  シミズさん、贅沢言ってはいけませんよ。 シミズ  ツチヤてめー!覚えてろよ!とにかく、パーティーやるから手伝え!ツチヤ! ツチヤ  な、何ですか? シミズ  お前は買い出しだ、テキトーに色々何か買ってこい! ツチヤ  ええ?私ひとりでですか? シミズ  じゃクロちゃん連れていっていいよ。 クロガネ 分かりました。 ツチヤ  え?だってこの方、普通の人には見えないんですよね? クロガネ 大丈夫です。 ツチヤ  何が? シミズ  とにかくさっさと行ってこいよ! ツチヤ  はい、あの、お金は…。 シミズ  大丈夫だよ。 ツチヤ  何が? クロガネ ほら、行きますよ! ツチヤ  ええー…。 シミズ  キムラさんと幽霊と女狐はこの部屋の片づけ、終わったら荷物運び。 ホムラ  女狐って私のこと? キムラ  女狐っていうのやめてもらっていいですか? ミヅキ  えー、掃除と力仕事ー? シミズ  あれだろ?どうせポルターガイスト的なアレでチャチャっとできんだろ? ミヅキ  できないわよ! シミズ  え?できないの? モモカ  できないよ、幽霊をなんだと思ってるの? シミズ  なんだよガッカリだよ、ガッカリ幽霊。 モモカ  ガッカリ幽霊はやめて。 シミズ  まぁ荷物運びは主に俺がやるから、とにかく手伝ってくれ。まずは散らかったこの部屋を何とかしてくれ。じゃ、よろしく。 ―シミズ、ダンボールを持って奥の部屋に行く モモカ  しょうがないか…、それじゃ…これ、邪魔だから寄せて…よいしょっと。 ―モモカ、ダンボールを持つ、と段ボールからアルバムが落ちる。 キムラ  あ!何か落ちましたよ? ミヅキ  ん?何コレ? ホムラ  アルバム?? モモカ  ごめん、落ちちゃった? ―ホムラとミヅキ、アルバムを見る キムラ  あ、こら!勝手に見ちゃだめだよ! ミヅキ  まあまあ ホムラ  カタいこと言わずに。 モモカ  (覗き込み)どれどれ? キムラ  モモカさんまで。 ホムラ  これは…子供の写真? モモカ  ん?これって、もしかして…。(アルバム奪う) ホムラ  ちょ、ちょっと! ミヅキ  わっ!どうしたの?モモカちゃん。 モモカ  …この子…。 キムラ  知り合いでも写ってましたか? モモカ  この子だ…。 ホムラ  え? ミヅキ  もしかして!? キムラ  見つかったんですか?探している男の子? モモカ  うん…多分…。 ホムラ  どれどれ?どの子?? モモカ  この子。 ミヅキ  シミズさんの知り合いってことかな? ホムラ  でもこの子、どことなくあの人の面影残してない? ミヅキ  確かに。 キムラ  じゃあシミズさんが探してた男の子? ホムラ  でも身に覚えがないみたいなこと言ってたよね? モモカ  うーん、あれかな?やっぱり見た目が違うから分からなかったのかな? キムラ  見た目…? モモカ  私、二十年前はおばあちゃんだったからね。 キムラ  え?何?どういうこと??若返ったの?どうやって?? ミヅキ  違う違う、そうじゃなくて…、聞いたことないかな?死んだあと、人間は、なりたい自分の姿になれる、みたいな話。 キムラ  なりたい自分の姿…、じゃあ今の姿はモモカさんが死んだときの姿じゃなくて、 若い頃の姿ってこと? モモカ  うん、実は。 ミヅキ  でもそんな偶然あるかな?ただ似てる人ってだけかもしれないよ? モモカ  そうだね、ちゃんと確認してみる。 キムラ  確認… シミズ  (戻ってきて)おい!お前ら何くっちゃべってんだよ!全然片付いてないだろうが! キムラ  す、スミマセン…。 シミズ  あ!お前ら勝手に何見てんだよ! モモカ  あの、ここに写ってるのって…。 シミズ  いや、やめろって…、俺の小学生の頃の写真だよ。 ホムラ  やっぱり。 モモカ  あの、一か月くらいこの土地に住んでたって言ってたけど、その理由って…。 シミズ  なんだよ急に、だから色々あったんだよ。 ミヅキ  その色々を知りたいんだって。 シミズ  なんで? モモカ  それは…。 キムラ  ほら、モモカさんの未練の手掛かりになるかもしれないじゃない。 シミズ  俺の身の上話が? ミヅキ  う、うん…。 ホムラ  そうだよ、もったいぶってないではやく教えなさいよ! シミズ  うるせーな、そんなわけあるか!とにかく片付けろ、話はそれからだ。そしてこれは没収とする。 4人   あー。 ―シミズ奥の部屋にアルバム持って行く ホムラ  しくじったかー。 ミヅキ  どうしよう…。 キムラ  あ!あれ使えばいいんじゃないの?浄玻璃鏡だっけ? ミヅキ  えー、いやだよ。 キムラ  え?なんでよ? ミヅキ  だってそんなことしたら怒られるじゃん。 キムラ  怒られる? モモカ  浄玻璃鏡で調べる時は鏡で殴らないといけないんだって。 ホムラ  何だそりゃ。 ミヅキ  しかも結構な勢いで殴らないといけないからね。 キムラ  それって大丈夫なの? ミヅキ  うん、大体三回に一回は壊れるよね。 ホムラ  壊れちゃうの?それって貴重な道具なんじゃないの? モモカ  良くわかんないけど百均だから気にしないでとか言ってたよ。 キムラ  いや道具よりも殴られた相手のほうが気になってるんだけど…。 ミヅキ  まぁ視えてない相手だったら何とでもなるんだけど、あの人、私たちのこと視えてるから絶対怒られるもん。 ホムラ  それは…確かに。 モモカ  怒られるだけで済むかな? キムラ  とりあえず片づけやっちゃおう、そのあと話を聞けばいいじゃない。 モモカ  うん、そうだね。 ―そこにツチヤとクロガネ帰ってくる クロガネ ただいま戻りました。 ミヅキ  あ、クロさん。 キムラ  早かったですね。 ツチヤ  ええ、まぁとりあえず適当に買ってきたんで。 ―シミズ、戻ってくる シミズ  おお、クロちゃんお疲れー。 クロガネ お疲れ様です。 シミズ  悪かったね、お使い頼んじゃって。 クロガネ いえいえ、この程度ならいつでも。 ツチヤ  あの、私に労いの言葉は…。 シミズ  ん?あれ?ツチヤさんまだいたの? ツチヤ  いますよ、お金出したの私なんですから。 シミズ  そっかー、それじゃお疲れー。 ツチヤ  待ってくださいよ。追い出そうとしないで…。 シミズ  だってもう用ないだろ? ツチヤ  いや、私もパーティー参加させてくださいよ、買ってきたの私ですし…。 シミズ  えー、どうするー? ホムラ  ツチヤはいらないかなー? ミヅキ  うん、もう帰っていいんじゃないかな? モモカ  買い出しありがとうございました。 ツチヤ  えー…。 六人   お疲れ様でしたー。 ツチヤ  …あ、はい…お疲れ様でした…。 ―ツチヤ、帰ろうとする シミズ  ははは、冗談だよ。 ツチヤ  (泣きそう)冗談? シミズ  ごめんごめん、とりあえずツチヤさんも片づけ手伝ってくれ、コレ何とかしなきゃ始められないだろ? ツチヤ  あ。は、はい! シミズ  で、何買ってきてくれたんだ…、どれどれ?…うまい棒?…ビッグかつ?…酢だこさん太郎?…きゃべつ太郎…、って駄菓子ばっかりじゃねぇかよ!小学生か! クロガネ なんか入ったお店、駄菓子しか売ってなかったんですよね。 モモカ  どこ行ったんですか? ツチヤ  なんか、ムロタっていうお店。 シ/モ  へー、あそこってまだやってんだ。 シミズ  ? モモカ  ? シミズ  え?ムロタ知ってんの? モモカ  そりゃこの辺にずっと住んでたから…、あなたこそ…。 シミズ  俺この辺に住んでた頃小学生だったから、その頃よく行ってたんだよ、あの駄菓子屋。 キムラ  駄菓子屋なんてまだあるんですね? ミヅキ  私駄菓子屋って行ったことないや。 モモカ  あそこって冬になるとおでん出すんだよね。 シミズ  そうそう、一個五十円でさ…、あ、おでんていえばさ、俺昔あの店でさ、知らないおばあちゃんにおでんおごってやったことがあるんだよ。 モモカ  え? ミヅキ  これは? ホムラ  もしかして? クロガネ どうしたんです? キムラ  その話、詳しく! ツチヤ  いや、どうしたんですか皆さん。 ホムラ  ツチヤは黙ってて! ツチヤ  …はい…。 シミズ  いや、そんな期待されるような話じゃないんだけど…、子供の頃、あの辺で知らないおばあちゃんが座り込んでてさ、どうしたの?って聞いても何も答えてくれなくてさ、で、俺小学生だろ?単純にお腹すいてんのかな?って思って、ムロタでおでん買って、一緒に食べたってだけの話だよ。 ミヅキ  へー、子供の頃はやさしかったんですね? シミズ  子供の頃はってなんだよ。今でも優しさ全開だわ。 キムラ  で、そのあとおばあちゃんはどうなったんですか? シミズ  別にどうもなってないけど…、あ、でも、「ありがとう、明日またここに来れる?」って聞かれて、うんって答えたんだけど、俺、次の日熱出して寝込んじゃってさ…、悪いことしちゃったよな…。 モモカ  そう…だったんだ…。 ホムラ  でもシミズはなんでそのおばあちゃんに優しくしたの? シミズ  なんでって、老人には優しくするもんだろ?でも、まぁ、俺も寂しかったんだろうな…。 クロガネ 寂しかったとは? シミズ  ここに住んでいる頃、いろいろあったって言っただろ?あの頃、色々と不幸が重なって、一時的に親戚の家に身を寄せていたんだ。すぐ父方の実家に引き取られることになったから、一か月くらいでまた移り住むことになったんだけど。 ミヅキ  その親戚の家ってのがこのあたりだったんだ。 シミズ  そう。で、まぁ、親にも会えないし、親戚の家だから気も使うし、で、なんか何ていうか…、大人に甘えたかったんだろうな。だから俺自身、優しくしたっていうより、甘えさせてもらったって感じなんだよ。 キムラ  ふーん、なるほどね。 シミズ  …引っ越す前に、ちゃんとありがとう、って言いたかったんだけどな。 ミヅキ  だって、モモカちゃん。 シミズ  ん? モモカ  ちょ、ちょっとミヅキちゃん! キムラ  いいじゃない、言っちゃえば、ねぇ? シミズ  何言ってんだ?お前ら。 ホムラ  実はモモカちゃんて二十年前おば…。 モモカ  (ホムラの口塞いで)ちょ、しっ! ホムラ  (もごもごしながら言えてない感じで)なんで? モモカ  そのカミングアウトは私のタイミングでやるから!ねっ! ホムラ  (うなずく) シミズ  さっきから何やってんだよ。 モモカ  いや、何でもない何でもない…、きっと、伝わってると思うよ。その気持ち。 シミズ  だったら、いいけどな…。 ―SE「鎖切断音」 クロガネ (気付いて)おや? キムラ  どうしたの? クロガネ いや、モモカさんを縛りつけていたシガラミが消えたようでして…。 ミヅキ  シガラミ?? クロガネ はい、なんでしょうね?まるで未練を断ち切ったかのような。 ホムラ  え?それじゃこの部屋から出られるようになったってこと? クロガネ ええ、おそらく。 ミヅキ  え?それじゃちょっと出てみようよ。 モモカ  え?え?ちょっと、ちょっと待って…。 ―ミヅキ、モモカを引っ張って部屋から出ようとする。 ―が、二人とも見えない壁に阻まれる モモカ  きゃっ ミヅキ  ぐえっ…、いたた…。ちょっとクロさん、出られないじゃん。 クロガネ あれ?おかしいですね?? シミズ  いやだって結界張ってんだろ?結界っていうかお札で散らかされてるだけだけど。 キムラ  あ!ごめんなさい、そういえばそうでした。 シミズ  ほら、さっさと片付けるぞ。ツチヤ、おめーもやるんだよ。 ツチヤ  は、はい…。なんか私の扱い酷くなってないですか? ミヅキ  え?今さら? クロガネ ずいぶん前からひどい扱いになってましたよね。 ホムラ  うん。 ツチヤ  そんな…。 シミズ  じゃ、とりあえずみんなで隣の部屋に段ボール移動しちまおう。お札の片づけはその後だ。 全員   はーい。 ―ツチヤ、クロガネ、キムラ、ホムラ、ミヅキが段ボール持ってハケる。 (二人で一つとかでも可) ―シミズ、段ボールを持ってハケかけたところに、 モモカ  シミズさん。 シミズ  ん?どうした?? モモカ  ありがとう。 シミズ  ?え?何が?? モモカ  ふふふ、何でもないよ。私も運んじゃうね! ―モモカ、段ボールを持ち、シミズを追い越してハケる。 シミズ  何だありゃ?…ま、いいか、よいしょっと。 ―シミズ、がハケるのとすれ違いで、ツチヤたち再登場 ―シミズも段ボール置いたら再登場 ―全員で片づけ(一部は散らかし)ながらワイワイやって (幕)