【未来分岐点】 作:伊佐場 武 【CAST】 ヒトミ : レイ  : ミカ  : スズネ : ショウコ: カオリ : ー舞台奥の端、スポットの中に立つヒトミ ー舞台前のエリアにレイが入ってくる。 ー一応前を見ているが、スマホで周囲が見えていない様子。 ーSE「クラクション」 ー気づくレイ、立ちつくす ー暗転後、SE「急ブレーキ」、からのSE「衝突」 ー地明かり、レイいない ー呼吸の荒いヒトミ、周囲を見渡す。 ーレイ、さっきと同じように登場 ーヒトミ、レイに駆け寄り声をかける ヒトミ  あ、あの…。 レイ   …。 ヒトミ  あの…、ちょ、ちょっと、いいです…か…? レイ   ん?え?何々?…私?? ヒトミ  あ…え…と…はい…。 レイ   え?誰?どこかであったこととかあったっけ? ヒトミ  いや、その…、そうじゃなくて…。 レイ   ま、いいか。で、何か用? ヒトミ  いえ…あの…。 レイ   ん? ヒトミ  え、えー…っと…。 レイ   ?? ヒトミ  …。 レイ   あの…さ、私、この後用事があって向かっているところなんだけど…。 ヒトミ  あ、はい、すみません。 レイ   特にないなら、行ってもいいかな? ヒトミ  はい…、ごめんなさい…。 レイ   うん、それじゃあね。 ーレイ、再びスマホの画面を見て歩こうとする。 ヒトミ  あ、あの! レイ   え!?もう、何よ。 ヒトミ  スマホ…。 レイ   スマホ?…がどうしたの? ヒトミ  見ながらだと、危ない…から…、その…。 レイ   ん?(自分の手元をみて)あ、そうだね。…あ、さっきもそれを言いたかったのか、分かった、ありがとう。それじゃあね。 ヒトミ  あ、はい…。 ーレイ、スマホを一旦しまい、メガネをはずして一歩、歩き出す。 レイ   え??(右側をみる)…うわっ!! ーレイ、あわてて下がり、しりもちをつく。 ー直後、トラックの走行音 レイ   いててて…、バカヤロー、信号無視するんじゃねー!! ーレイ、メガネをかけなおし、ヒトミの元にくる レイ   ありがとー。え?何で分かったの?? ヒトミ  え?…あ、いや…、分かったって、何のこと…。 レイ   私、あのまま歩いていたら確実にひかれていたもん、信号は見てたけど、車が飛び出してくるなんて思わなかっただろうから。 ヒトミ  いや…あの…、偶然…だと思う…。 レイ   偶然??あのタイミングで声かけて?? ヒトミ  う…うん…。 レイ   そ…っか、ま、いっか。それよりこの後、何か予定とかあるの? ヒトミ  え?別に…ないけど、何で…? レイ   お礼させてよ、助けてもらったんだからさ。 ヒトミ  そんな、お礼なんて…別に…それに確か用事…。 レイ   私、レイ。あなたの名前は?? ヒトミ  え…ヒ…ヒトミ…です。 レイ   (ヒトミの手をとり)それじゃ、ヒトミ。行こー! ヒトミ  いや…あの…ちょっと…。 レイ   どこにする?どこがいい?がってん寿司?? ヒトミ  …私、生モノはちょっと…。 ー二人、少し歩いて椅子(っぽいもの)に座り、 ー店内 レイ   (立ち上がり)えー!!それってほ…。 ヒトミ  ちょ、ちょっと、声…。(周りを見て)あ、すみません、ごめんなさい、何でもないんです。 レイ   (声を潜めて)それって本当?本当に未来が見えるの?? ヒトミ  うん…、でも、未来が見えるって言っても、どんな未来でもってワケじゃなくて、その人に起こる不幸というか、よくないことが起きる場合にだけ見える感じで…。だから、そんな凄いことじゃないっていうか…. レイ   へー、そうなんだー。 ヒトミ  こんなの、気持ち…悪い、よね…? レイ   え?何で?? ヒトミ  だって、自分の未来を見透かされてる、というか、操られているというか…。 レイ   そんなこと考えもしなかったけど。 ヒトミ  え? レイ   だってそのおかげで私は助かったんだよ? ヒトミ  …。 レイ   誰に言われたのか分からないけどさ、そんなの受け止め方なんて人それぞれだよ。 ヒトミ  …でも…。 レイ   もっと自信、持ちなって!! ヒトミ  …うん…。 レイ   …実は、私もね…(メガネはずす)。 ーBGM「エクソシストのテーマ」 ヒトミ  …え?もしかして…。 レイ   ん?…あ、ごめん、電話だ。(メガネかけなおして電話)はい、もしもし…。…え?…あ!ほんとだ、もうこんな時間。分かった、すぐ行くー。(電話切る)ごめん、誘っといて悪いんだけど、用事があったのすっかり忘れてた、あはは…。 ヒトミ  あ、やっぱりあったんだ用事…。 レイ   でさ、ヒトミって、LINEとかってやってる? ヒトミ  そういうのは…。 レイ   スマホは? ヒトミ  …一応…、あるけど…。 レイ   ちょっと貸して…、ちょちょいの…、ちょい、っと。はい。友達登録までやっといたから。 ヒトミ  え?うそ、今の一瞬で?? レイ   また連絡するね。今日は本当にありがとう。それじゃあね! ーレイ、去る ヒトミ  …友達登録…友達…ありがとう…。…分かってる、でも…、助けられないことがあるから辛いんだ…。…ミカちゃん…。 ー暗転 ー回想(小学生時代) ー冒頭と同じ位置にいるヒトミ ーエリアに入ってくるミカ ミカ   ヒトミちゃーん、早くおいでよ。 ヒトミ  ミカちゃん危ない!とまって!! ミカ   え?(足をおろしかけてストップ)わー、犬のウンコだー! ヒトミ  危なかったー。 ミカ   …。 ヒトミ  どうしたの?ミカちゃん。 ミカ   …犬のウンコってかりんとうみたいだよね。 ヒトミ  そういうこと言うと高林堂のおばちゃんに怒られるよ。 ミカ   ♪いっぬ〜のウンコはかりんとう〜、みたいだー、みたいだー(フニクリフニクラ風) ヒトミ  ちょっと、そんな歌ダメだよー。ミカちゃんー! ーミカ、歌いながらハケ、ヒトミそれを追いかけつつスポットへ ミカ   よし、ヒトミちゃん。木登り競争だよ! ヒトミ  ミカちゃん、その木ダメ!上のほう見て!! ミカ   ん?あ!クマケムシ!! ヒトミ  そのまま登ってたら、服でケムシつぶしちゃってたところだよ。 ミカ   …。 ヒトミ  どうしたの?ミカちゃん。 ミカ   …ヒトミちゃん、犬飼いたいって言ってたよね? ヒトミ  え?どうしたの急に。 ミカ   クマケムシって犬みたいだと思わない?(つかまえる) ヒトミ  いやー!思わない思わない思わないー! ミカ   えー似てるよー。耳としっぽつけたら、見てホラ。 ヒトミ  いやー、だってケムシだよー? ミカ   大丈夫だよ、クマケムシは毒ないからー。 ヒトミ  そういう問題じゃなくて…。 ミカ   ♪まいごのまいごのクマケムシ、お耳としっぽでわんちゃんだ(犬のおまわりさん風) ヒトミ  いやー、来ないでー。 ーヒトミ逃げるようにハケ、追いかけるようにミカもはける。 ーヒトミ、スポットに戻る ミカ   おはよー、ヒトミちゃん。 ヒトミ  おはよー。あ!今日雨降るよ、カサ持ってきて。 ミカ   え?ホントに?分かったちょっと待ってて。 ーミカ、一度ハケ、カサ持って再登場 ミカ   お待たせー。それじゃ行こっか。 ヒトミ  うん。 ミカ   こんなに天気いいのに、雨ふるかなー? ヒトミ  降るよ、カサ忘れたら、ずぶ濡れになっちゃう。 ミカ   ずぶ濡れはやだねー。それにしてもさー、ヒトミちゃんていつも危ないとき、助けてくれるよね。 ヒトミ  そんなことないよ。 ミカ   実は、ヒトミちゃんは未来から来た女の子だったのでした。 ヒトミ  あはは、違うよ。でも…。 ミカ   でも、なぁに?? ヒトミ  …何かね、見えちゃう時があるの。 ミカ   え?ホントに?? ヒトミ  うん。目をこう、ぎゅっ、てつむって、ぱっと開くとね。 ミカ   そうなんだ。(言われたこと何回かやる) ヒトミ  …何やってるの? ミカ   …うーん、私には見えないみたい。 ヒトミ  あはは、私も、いつも見えるわけじゃないよ。 ミカ   そうなの? ヒトミ  うん。でも、お母さんとか、お父さんも同じことやってた。やっぱり私だけなんだって…。あ! ミカ   どうしたの? ヒトミ  このこと、言っちゃダメって言われてたんだった。ごめん、ミカちゃん。内緒にして! ミカ   なーんだ、そんなことかー。大丈夫だよ。 ヒトミ  ほんとに? ミカ   うん。おんなのやくそく! ヒトミ  よかったぁー。 ミカ   あ、急がないと遅刻しちゃうかも。 ヒトミ  え!じゃ、走ろっか。 ミカ   うん。よーいどん!♪ヒットミちゃんはーみっらっいー、見える、見える、見える、ヒトミちゃん!(クシコスポスト風) ヒトミ  ちょっとミカちゃん、ダメだってー! ーミカ、歌いながら走ってハケ、ヒトミ追いかけながらスポットに戻る ーヒトミ、スポットにいるがエリアつかない ヒトミ  あれ…?ミカ…ちゃん…? ミカ   (暗い中で)なぁに? ヒトミ  え?そこに…いるの…? ミカ   どうしたの?ヒトミちゃん。 ヒトミ  どうして?どうして何も見えないの?? ミカ   大丈夫?ヒトミちゃん、ヒトミちゃん!! ヒトミ  いや、ミカちゃん…、いやー! ー照明、地明かり ーヒトミのそばにミカ ミカ   どうしたの?ヒトミちゃん。 ヒトミ  ミカ…ちゃん? ミカ   なぁに? ヒトミ  ちゃんと…見える…ミカちゃん…。 ミカ   どうしたの? ヒトミ  ミカちゃん。今日は一緒に、まっすぐ家に帰ろうね。 ミカ   え?本当にどうしたの?いつものヒトミちゃんじゃないみたい。 ヒトミ  約束して!ミカちゃん。 ミカ   ?…うん分かった、約束する。 ヒトミ  本当だよ? ミカ   うん、本当に。それじゃ、帰ろっか。 ヒトミ  …うん。 ー二人一緒にハケていく。 ー暗転、回想終了 ー街中、レイが待っている ーそこにヒトミがやってくる レイ   あ!きたきた。こっちこっちー。 ヒトミ  …どうも…。 レイ   いやー来てくれないかと思ったけど、よかった来てくれて。 ヒトミ  …今日は…何の用…ですか…? レイ   ん?用がなきゃ、呼んじゃダメだった? ヒトミ  え? レイ   そうだな、それじゃ。ヒトミに会いたかった、って理由じゃダメかな? ヒトミ  か、からかわないでください! レイ   あはは、ごめん。本当はさ、この前、たいしたお礼もできなかったからさ、その埋め合わせがしたくて。 ヒトミ  …そんなの…別にいいです…。 レイ   ダーメ、それじゃ私の気がすまないの。それじゃ、行くよ! ヒトミ  あ!カラオケやさんは…、その…やめたほうがいいよ。 レイ   え?…あ!もしかして!? ヒトミ  …うん。 レイ   そっか、それじゃ別のところにするかー。 ー二人、少し歩いて椅子(っぽいもの)に座り、 ー店内 ーレイ、スマホを見ている レイ   あ!出てる出てる。カラオケ店で出火、ケガ人とかは…いなかったみたい。 ヒトミ  よかったー。 レイ   あ、そうか!自分たちの代わりに犠牲になっていた人がいたかもしれないもんね。 ヒトミ  うん。 レイ   でも、また助けてもらっちゃった、ありがとう。これはますます信じざるをえない状態になりましたよ。 ヒトミ  ふふふ…、だけど、私とはもう関わらないほうがいいかも…。 レイ   え?何で?? ヒトミ  それは…私が…。 ーそこにスズネが割って入ってくる。 スズネ  お話中すみません。あのー、ちょっとよろしいでしょうか? ヒトミ  え? レイ   え?誰?? スズネ  あーっと、すみません。私、こういうものでして(名刺二人に渡す)。 ヒトミ  月刊ESP編集部の、スズネさん? レイ   あー、あのインチキオカルト雑誌のね。何の用ですか? スズネ  おやおやこれは耳に痛いお言葉。いや、私どももですね、分かってるんですよ、このままじゃいけない。本当のことを伝えられる雑誌じゃなければダメだろうって。 レイ   ずいぶんと殊勝なんですね。担当する雑誌を変えてもらったらどうですか? スズネ  それもひとつの手、ですが、私の求めるものはそれじゃありません、オカルトは嫌いじゃないんで。…私がやりたいのはただひとつ、本物のオカルトを掲載することです。 ヒトミ  本物の…オカルト…? レイ   そうですか、生憎、この辺りにはこれといった都市伝説もありませんよ。岩手県にでも行って遠野物語の舞台でも聖地巡礼してみたらどうですか? スズネ  いやいや、そんなものよりもっとこう、グっとくるモノ、見つけちゃったんですよ。それでちょっとお話を聞かせてもらいたくてですね…。 レイ   私たちにはあなたに話すようなことは何もありません。行こう、ヒトミ。 ヒトミ  う…うん…。 スズネ  へぇー、ヒトミさんって言うんですねぇ。あなたとお話がしたいんですよ私は…、あなたとねぇ。 レイ   しつこいですね、話すことなんか何もありませんから! スズネ  うるさいですね、メガネさん。あなたには聞いてないんですよ。ヒトミさん、あなたに聞いているんです。 ヒトミ  …私も…話すこと、ありません…。 レイ   わかりましたか、それじゃ行こう、ヒトミ。 ーヒトミ、レイ去ろうとする スズネ  あー、そういえば。タチバナ ミカっていう名前に聞き覚えは? レイ   知らないわよそんな名前!ね、ヒトミ。…ヒトミ!? ヒトミ  ミカ…タチバナ…、ミカ…ちゃん…。 レイ   ヒトミ…? スズネ  おや?聞き覚えがありましたか、あなたにとっては忘れられない相手なんですかね?あなたの…。 ヒトミ  やめて!…ミカちゃんのことは…ミカちゃんの…ことは…。 レイ   ヒトミ!…ちょっとあんた!なんかよく分かんないけれどそんな脅迫まがいなことして恥ずかしくないの!(つかみかかる) スズネ  ちょ、ちょっとやめてくださいよ。名前を聞いたことがあるかって聞いただけじゃないですか。 レイ   私はね、あんたみたいなのが一番嫌いなんだよ!相手の過去をほじくりかえして追い込むようなやつがさ。 スズネ  そんなことしてやしませんよ。ただ聞いただけですから。…「タチバナ ミカさん」のことをね。 レイ   そうやって…。 ヒトミ  やめて! レイ   …ヒトミ…? ヒトミ  聞きたいこと…ちゃんと話します。話しますから…、レイちゃんには…ひどいことしないで…。 レイ   ?何言ってんの?ヒトミ。 スズネ  それは、助かります。 レイ   ヒトミ! スズネ  それでは最初に…。 ヒトミ  最初に…そこのカメラを渡してもらっていいですか? レイ   え?カメラ…? スズネ  !?これは驚きました、まさか気づかれていたとは…。助かりましたね、レイちゃん。 ースズネ、隠し持っていたペン型カメラを取り出し、ヒトミに渡す。 レイ   そんなところに!?でも、何で!? スズネ  もしものときの保険ですよ。あなたみたいに血の気が多い人が一緒の場合、その後の交渉が進めやすくなりますからねぇ。 レイ   え?それじゃ、ヒトミはもしかして…? スズネ  あのー、いい加減、この手離してくれませんかねぇ…。 ーレイ、気づいてスズネを解放 スズネ  ふぅ、あなたを守るために、話を聞かせてくれる気になったのかもしれませんねぇ。 レイ   ゴメン!ヒトミ、私のせいで…。 ヒトミ  大丈夫だよレイちゃん。これは私自身の問題だから。 スズネ  それでは、いくつか聞かせてください。…あなた、未来を予知する力をお持ちですね。 ヒトミ  …はい。 スズネ  具体的には? ヒトミ  人に起こる、不幸を見ることができます。 スズネ  不幸を…、それでこの間もこの、レイちゃんを助けたというわけですか。 レイ   あんた、あそこにいたの? スズネ  偶然ですけどね。何かギクシャクした二人がいるな、って思ってみてたんですよ。そしたら間一髪であなたが助かって、こりゃ何かあるな?って。オカルト記者の勘ってやつですかね? レイ   …。 スズネ  でも、不幸だけ?ですか??他には?? ヒトミ  不幸だけです。だからそんなに大した力じゃないんです。 スズネ  うーん不幸だけかぁ〜、…でもまぁ、その力で人助けができます、困ったことがあったらいつでも〜。って煽っとけば何とかなるかぁ〜? ヒトミ  …え? レイ   そんなことしたら、ヒトミがどうなるか分かってんの!? スズネ  人気者になるんじゃないですか? レイ   そんなんで済むわけないでしょう。周りから好奇の目で見られて、日常生活が送れなくなるのよ。 スズネ  へぇ、そうですか…。 レイ   そうですか、って…! スズネ  それにしても随分とそういった事情にお詳しいんですね?そういえば名刺出した時点で怖い顔してましたもんね。実は他にも、誰かそういったお知り合いがいらっしゃるんですか? レイ   何?今度は私に矛先を向ける気? スズネ  いやいや…ま、今日のところはこれで、ね。怖いお姉さんもいるんで余計な煽りもしないでおきますよ。あ、そうだ!ひとつ私の未来も見ていただけませんかね?とりあえず無事に帰れるかだけでも見ていただきたいんでね。 レイ   見ることないよ、ヒトミ。 スズネ  いいじゃないですか。ね?そうだ、見てくれたら、もう取材に来ませんから。 ヒトミ  …分かりました。 レイ   ヒトミ!あんなのウソに決まってるじゃない! ヒトミ  …うん…でも…これやらないと、あの人絶対帰らないだろうから…。 レイ   …それも、そうね。 スズネ  ちゃちゃっとお願いしますよ〜。 ーヒトミ、目を閉じてぱっと開く ー照明、ヒトミのスポットのみ ヒトミ  …え!? スズネ  どうしましたぁ?何か見えましたかぁ? ヒトミ  …そ…んな…、あの時と…おんなじ…。 スズネ  何か見えたんですね?教えてくださいよぉ。 ヒトミ  …ダメ…何も…できない…。 ー崩れ落ちるヒトミ ー照明戻る レイ   ヒトミ! スズネ  え?どうしたんですか?いつもこんな感じなんですか? レイ   ヒトミ?大丈夫?ヒトミ! ヒトミ  (ゆっくりと顔を上げ、スズネを見る)スズネさん…でしたっけ? スズネ  あ、はい。 ヒトミ  ごめんなさい、あなたにしてあげられることは、何もありません…。 スズネ  え?いや…え?な、何ですか? ヒトミ  ミカちゃんの時と一緒だった…、ミカちゃんの時と…。 レイ   ミカちゃん…? スズネ  もしかして…タチバナ…ミカ…!? ヒトミ  (頷く) レイ   ヒトミ、ミカちゃんて何なの?何を見たの? ヒトミ  ミカちゃんは…、小学校の頃の友達…、いつも一緒に遊んでて、でもお転婆だったからいつも危なっかしくて…、何度も未来を教えてあげてた…、だけどある日、真っ暗で何も見えなくなって…、次の日…。 レイ   次の日?何があったの…? ヒトミ  ミカちゃん…いなくなっちゃって…。 レイ   …え?どういうこと?? ヒトミ  分からない…、小学生だった私たちには何も分からなかった。ただ、先生からは突然転校が決まった、とだけ言われて…、引越し先の住所も教えてもらえなくて…、で、みんな何となく感じたの、ミカちゃんは引っ越したんじゃない、死んじゃったんじゃないかって…。 レイ   …何…それ…。 ヒトミ  それと同じだった、暗くて何も見えない…、未来がまったく見えない…、だから、あなたの未来は…。 スズネ  ちょ、ちょっと、何それ、おどしてるつもり??それを何とかして欲しかったら記事にするな、とか? ヒトミ  いいえ、先ほども言いましたけれど、あなたにしてやれることは何もないんです、何も。真っ暗で何も分からないから回避することもできないんです。もし回避できる未来が見えていたのなら、駆け引きもできたんですが…。 スズネ  ちょっとふざけないでよ!…え?死ぬの?私が?何で?どうして?? ヒトミ  分かりません。でも、もしかしたら私が未来を変えることで、未来に起こる不幸を回避することで、どこかにしわ寄せがきて、決して変えられない不幸ができてしまうのかもしれません。だから…、ごめんなさい…。 スズネ  え?何で?私まだ一回しか見てもらってないじゃない、なのに何で? ヒトミ  最近…、また未来を見るようになったから…。 スズネ  え?それって…(レイを見る) ヒトミ  はい、おそらく…(レイを見る) レイ   …。 スズネ  …。 ヒトミ  …。 レイ   …え?私?? ヒトミ  …おそらく…。 スズネ  ちょっと!何で私があんたのせいで死ななきゃなんないのよ! レイ   いや、知らないわよ!え?それってそういうルールなの? ヒトミ  分かんない。だけどそうなんじゃないかな?って。 レイ   えー、それじゃ、私のせいじゃないかもしんないじゃん。ちょっと待ってよ。何かそういうルールがある、とか誰かから聞いたんだったらまだしも…。 ヒトミ  え?…だってそんなの、分かりようがないし…。 レイ   しょうがないなー。こんなやつでも私のせいで死んだってされたら後味悪いし、ちょっと聞いてみるよ。 スズネ  え?聞くって…誰に?? レイ   死神に(メガネを外す)。 ヒ・ス  …え? ―一瞬暗転 ―その間に、タブレットを持ったショウコが出てくる。 ショウコ どうもー。 レイ   あれ?ショウコちゃん、ここにいたの? ショウコ うん、今この人の担当なんだー。 レイ   え?そうなんだ。偶然―。 スズネ  え?何?何と話してんの?? ヒトミ  え?レイちゃん、そこに誰かいるの? レイ   ん?あ、そっか。えーと、どこにあったっけ? ―レイ、ポケットからラムネ(森永)を取り出す レイ   あ、あった。はい、二人とも口あけてー。 ―言われるままに口をあける二人 ―レイにラムネを放り込まれる。 スズネ  ?何これ?ラムネ?? レイ   そう。何かラムネに含まれるブドウ糖が集中力を高めるんだって。三月のライオンでそんなこと言ってたよ。 ヒトミ  集中力が高まって…、それで? レイ   んー、そろそろ見えてきたんじゃない?ほらココ。 ―レイの示す先を見つめる二人 ショウコ はろー。 スズネ  う、うわぁ! ヒトミ  え?誰?? レイ   死神のショウコちゃん、昔からの友達なんだ。 スズネ  いや、死神と友達って…。 ショウコ 初めましてー、ショウコです。趣味はSNS、最近ツイッターとフェイスブック始めましたー。フォローしてねー、アカウントは…。 ヒトミ  なんか、見た目と中身のギャップが…。 ショウコ 何か言った? ヒトミ  いえ。聞こえてないなら別にいいです。ていうかレイちゃんて、あの…そういうの見えちゃう人なの…? レイ   まあねー。そういえばショウコちゃん。聞きたいことがあるんだけれど…。 ショウコ あー、さっきまで話してたやつ? レイ   うん、そう。話が早くて助かるわー。 ショウコ そうね、ま、結論から言うと関係ないよ。 レイ   よかった、ヒトミ。関係ないって。 ヒトミ  え?で、でも…。 ショウコ あら?疑うの?こう見えても私、死神よ?「死」に関して言えばプロよ、プロ。 ヒトミ  いや、あの…はい…でも…。 ショウコ 大体さー、あなた何で自分が原因で他人が死ぬとか思ってるわけ?何なの?死神のつもりなの?ばっかじゃないの?死神は私だっての。 レイ   ちょ、ちょっと、ショウコちゃん。ちょっと言い方キツイって…。 ショウコ いいのよ、こんだけ言われたって、どうせ心のどこかで、「やっぱり自分のせいかもー」とか思ってるんだから。 ヒトミ  え?ど、どうして分かるんです…? ショウコ だーかーらっ!私ね、死神なの!みんな「死」のほうばっかり注目してると思うんだけどさ!「神」なのよ「神」!わかってる?人間の考えなんてお見通しだっての。 ヒトミ  でも…、だって…、起こるはずだった不幸を回避したことで…、なんていうか、不幸が溜まって、どこかにしわ寄せが来るものなんじゃないの? ショウコ ないの、そんなこと。あのさ、例えば、食べ放題のお店に行くとするじゃない?そういう時って、「あー今日は食べ放題行くから、お昼抜いて沢山食べて、元とれるようにしよう。」とか思ったりするじゃない?でもそんなことしたところで、別にいつもと食べる量変わんなかったりするでしょ? スズネ  あ、確かに…。 レイ   え?そう?私は食べ放題だったら三倍食べるけど。 ショウコ レイちゃんは、だって、食事抜いたりしないでしょ?ただ三倍食べるだけじゃない。 レイ   そういえば。 ヒトミ  え?それじゃ、別に不幸を回避したところで、その、不幸の量が溜まったりすることは…。 ショウコ ありません。ただ回避されただけです。みんなが幸せになるだけです。 レイ   だってさ。 スズネ  え?でもそれじゃ何で私の未来は見えなかったの? ヒトミ  そうです。以前も、ミカちゃんの時に見えなくなったり…。 ショウコ ああ、だってそれは回避されたら困るもの。 スズネ  困るって、誰が? ショウコ 私が。 スズネ  何で? ショウコ だって回避されちゃったら連れて行けないじゃない。 スズネ  連れて行くって…、どこに…? ショウコ うーんと、俗っぽい言い方するなら、あの世? スズネ  …え? ショウコ たまにね、やんなきゃいけない時があんのよ。そういうの。ま、別に無視しても構わないんだけどさ、そうするとアイツ拗ねるし…。 レイ   え?アイツって? ショウコ 普段偉そうにしてるヤツ。 ヒトミ  偉そうにしてるヤツ? ショウコ うん。ま、色々あるのよ。で、そういう時にさ、君みたいに未来の不幸が見えちゃう人とかいるとスムーズに事を運べなくなって困るから、見えなくなるようにしてんのよ。 レイ   へー、そういうことできるんだ。 ショウコ うん。神だし。 ヒトミ  それじゃ、やっぱりミカちゃんは…。 ショウコ うーん、私の管轄じゃなかったと思うから何ともいえないけど…。 ヒトミ  …そんな…。 レイ   ヒトミ…。 ―静寂、ショウコはタブレットで何か探している。 スズネ  いや、あの、ごめん。しんみりした雰囲気の中悪いんだけれど、今一番ヤバイのって私だよね? レイ   あんたのことなんか今どうでもいいわよ! スズネ  いや、一刻を争う事態でしょ!?ね、ちょっと、何とかならないの??何とかしてよ! ショウコ …ん?え?私??私に言った?? スズネ  そうよ、何とかしてよ、まだ死にたくない。 ショウコ えー?(レイに)どうするぅー? レイ   え、ちょっとやだ、私に委ねないでよ、私のせいで死んだみたいになるじゃん。 ショウコ いやー、そんなつもりは…。 スズネ  そうよ!ここで見捨てたらあなたのせいで死ぬのよ!あの死神と友達なんでしょ!何とか助けなさいよ! レイ   ほらぁ、…まったく腹立つなぁ…、それじゃひとつ約束して。 スズネ  え?助けてくれるの?うん、するする、何でもするから。 レイ   ヒトミのことは記事にしないこと、そして二度と近寄らないで。 スズネ  え…?そ、それは…ちょっと…。 レイ   ショウコちゃん、覚悟できたって。 ショウコ あ、いいの?それじゃ…。(かめはめ波のポーズをとって)かーめーはー…。 スズネ  約束する!約束するから!! レイ   ショウコちゃんストップ! ショウコ …はぅお…っとと、…ちょっとー、いいところだったのに、今日こそは出せそうだったのにぃ…。 レイ   ごめんね。あとでアレ、たくさん買ってあげるから。 ショウコ え!?ホントに?ご…いや、さ、三本?? レイ   まさか。 ショウコ そ、そう…だよね…。 レイ   十本買ってあげるわよ。 ショウコ え?あ、え?いや、ほんとに?? レイ   本当よ。 ショウコ やったぁー!それじゃ、もういいや。やることなくなったし、帰るねー、ばいばーい。 レイ   ばいばい。 ―ショウコ、スキップではける。 スズネ  …ん?え?何??これで助かったの…? レイ   ええ、だからさっさとココからいなくなってくれませんか? ヒトミ  …。 レイ   …ヒトミ…、元気出してよ、ヒトミのせいじゃなかったんだからさ…。 ヒトミ  うん…、でも…。 スズネ  …あのぉー…。 レイ   何よ、もうヒトミに用はないでしょ、さっさと帰りなさいよ。 スズネ  いやーそれなんですが、ヒトミさんではなく、今度はあなたに興味が湧きましてねぇ…。 ヒトミ  え? レイ   はぁ? スズネ  いやー死神と話せる少女。なんて、ね。こりゃもう話題沸騰ですよ。 ヒトミ  そんな…、約束したのに…。 スズネ  はい、そりゃもう、ですからあなたのことは記事にしませんよ。あなたのことはねぇ。 レイ   どうせ、そんなこと言ってくるんじゃないかって思ってたよ。 スズネ  あら?そうですか。それではあなたの件は了承いただけているもの、と考えてよろしいでしょうか? レイ   ああ、だけどな…。 ヒトミ  待って!! スズネ  …おや?…どうかしましたか? ヒトミ  レイちゃんのことは記事にしないで、代わりに、私のこと書いていいですから。 レイ   ヒトミ! スズネ  いや、でも、ねぇ…、約束してますし…。 ヒトミ  私のせいだから!レイちゃんのこと、犠牲になんてできないから! レイ   ヒトミ、私だったら大丈夫だよ、そんなことより…。 ヒトミ  大丈夫じゃない! レイ   …。 ヒトミ  嫌なのもう、私のせいで誰かが不幸になるのを見るのは…。 レイ   だからあれは違うって…。 ヒトミ  そんなの分かんないもん! レイ   ヒトミ…。 スズネ  …素晴らしい友情!私、感動しました。私、ココロ動かされました! レイ   … スズネ  確かに、どちらか一人が不幸になるなんて可哀想です、だから…。 ヒトミ  え?そ、それじゃ…。 スズネ  もう、お二人で有名人になってしまえばいいじゃないですか。 ヒトミ  え? レイ   何!? スズネ  いやー、ね、どちらか一方だけが有名人になるなんて公平じゃありませんからね。幸い、ヒトミさん本人からの許可も得られたことですし。 レイ   お前!本当にっ!! スズネ  おっと、暴力沙汰はカンベンですよ。そもそも先ほどの約束なんて口約束ですから、一方的にあなた方が不利になってしまいますしね。それじゃぁちょっと話を…。 ―そこに、ショウコ、戻ってくる ショウコ ごめんごめん、忘れてたー、あのさ…、何してんの? レイ   ん?ショウコちゃん? スズネ  え?うわ!…え?何で?? ショウコ そういえばそこの、ヒトミちゃんに言い忘れたことがあ…。 レイ   (遮って)私が呼んだのよ! スズネ  え? ショウコ いや、そうじゃな…。 レイ   あなたはもう死神に目をつけられている。そしてその死神を私はいつでも呼び出すことができる。このことの意味、分かるよね? スズネ  そ、それじゃ…。 ショウコ いつでも、って、そんな…。 レイ   分かったら、さっさとココを立ち去って、そして二度と近づかないで!今度その約束を破ったら…(指を鳴らす)。 ショウコ …ん? スズネ  わ、分かったわよ、もう来ない、もう来ないから! ―スズネ、逃げるように去っていく レイ   ふぅ…。 ショウコ え?何だったの?今の。 レイ   いやータイミングよく戻ってきてくれて助かったぁ…。 ヒトミ  タイミングよく?って、え?呼んだんじゃないの? レイ   うん、まぁいずれは呼んでいたと思うけど、さっきのは偶然だよ。 ヒトミ  偶然? レイ   そう。だって本当にショウコちゃん呼ぶとしたらいつ来れるか分かんないもん。 ヒトミ  そう…なんですか…? ショウコ そりゃあね、私も忙しいから…、だからさっき言われたみたいにいつでも、ってワケにはいかないわよ。 レイ   ごめんごめん、ああでも言わないとアイツ、帰らなさそうだったからさ。 ショウコ ま、別にいいけど。 ヒトミ  それじゃ、どうして戻ってきたんですか? ショウコ あ!そうそう。あなたに言い忘れたことがあったのよ。(タブレット取り出し)えぇと…、あったあった、タチバナミカ…。 ヒトミ  ミカ…ちゃん? ショウコ そう、ミカちゃん。気になってリスト調べてみたのよ。そしたら、いたの。 ヒトミ  じゃあ、やっぱり…。 ショウコ いやー、それがさー、この時の担当がカオリだったわけ。 レイ   カオリ? ヒトミ  ?は…はい…?? ショウコ そう。で、あのカオリのことだから、もしかしたらー、って思うじゃない? レイ   思うも何も、どのカオリのことか全然分かんないけど。 ショウコ え?あの死神界で超有名なカオリだよ? レイ   いや、さすがに分かんねぇよ。何で死神界の有名人を人間界の私たちが知っていると思ったんだよ。 ヒトミ  ていうかさっきも思ったんですが、死神ってたくさん居るんですか? ショウコ そりゃいるわよ。だってあなたたち人間だけでも何人いると思ってるの?他にも犬とか猫とか色々な生き物がいるんだから、私一人で何とかなるわけないじゃない。 レイ   あ、担当は人間だけじゃないんだ。 ショウコ まあ最近は、ほとんど下請けにやらせてるけどね。 レイ   下請け?? ショウコ うん。ま、ここらへんの話するとゴチャゴチャするからそれについてはまた今度話すわよ。 ヒトミ  それで、その、カオリさんがどうかしたんですか? ショウコ あ、そうそう、そうだった。で、カオリって超テキトーなヤツじゃん? レイ   だから知らないって。 ショウコ そうなの、そういう子なの!だから確認してみたらさ。まだ生きてるようでさ。 レイ   生きてるって、誰が? ショウコ だからミカちゃんが。 レイ   ミカちゃんって誰よ? ショウコ 誰って…、その、ヒトミちゃんの…、あれ?あなたの友達よね?? ヒトミ  え…、本当…本当ですか!? ショウコ 本当よ、もうすぐ、連れてくると思うから。 レイ   連れてくるって、誰が? ショウコ カオリが。 レイ   カオリって誰よ? ショウコ さっき話してたズボラな死神よ!さすがにこれは覚えてるでしょ! レイ   えー、超有名で超テキトーってとこしか覚えてない。 ショウコ うん、それぐらいしか言ってないしね。 ―そこにカオリ、めんどくさそうにやってくる カオリ  どこだー…あー、いたいた、おーい。 ショウコ あ!きたきた。 カオリ  ほんと勘弁してよね、私だって忙しいんだから。 ショウコ 忙しいって、どうせまたゲームでしょ? カオリ  ゲームじゃなくてゲーム実況!全世界が私のプレイに注目してるんだから! ショウコ それはいいから…。で、あの子は? カオリ  連れてきたわよ、ほら、こっち来て! ―ミカ、眠ったような状態で入ってくる ヒトミ  ミカ…ちゃん…? カオリ  あ、ちょっと待って。 ―カオリ、(いい音が出るまで)手をたたく。 カオリ  はい。 ミカ   (目覚める)は!寝てたー!! ヒトミ  ミカちゃん?本当に?ミカちゃん!(抱きつく) ミカ   え?誰??ていうかここドコ?え?今どういう状況?? ショウコ ちょっと、ちゃんと説明して連れてきたんでしょうね? カオリ  そんな面倒なことするわけなくなーい? レイ   それじゃ話通じなくてややこしくなっちゃうんじゃないの? カオリ  えー、めんどくさいなー、じゃあ。 ―カオリ、ラムネをミカに食べさせる ショウコ 何それ? カオリ  ラムネ、コレで何とかなるっしょ。 レイ   ラムネ…?…確かにそれなら大丈夫かもね。 ショウコ いやラムネはそんな万能なモノじゃないでしょうが。 ―ミカ、色々理解する ミカ   ヒトミちゃん!久しぶり! ヒトミ  ミカちゃん。やっぱりミカちゃんだ。 ショウコ ご都合主義がひどすぎる。 カオリ  ただのラムネじゃなくってさ、ホラあるじゃん、いろいろとさ、あの…ああいったあのー…、帰るわ。 レイ   いや、急にどうした? カオリ  いやだって私もういらないっしょ、実況動画の編集とかしなきゃだし…、余計なことで時間使っちゃったから、ショウコ、あんたも手伝って。 ショウコ え?何で私が? カオリ  あんたの都合に付き合ったせいで時間がなくなったんだから当然だろ? ショウコ えー…。 カオリ  ほら、行くよ。(ショウコの手をつかむ) ショウコ あ、ちょっと待って。(レイに手紙渡して)これ、ヒトミちゃんに渡しておいて。 レイ   え?あ、ああ、うん分かった。 ―カオリ、ショウコの手を引っ張ってはける レイ   何だったんだアレ? ミカ   ごめんね、ヒトミちゃん。小学生の頃、急に転校が決まってさ。挨拶もできなくって…。 ヒトミ  心配だった。ミカちゃんの未来が見えなくなって、そのあとすぐにいなくなっちゃって、みんなが…ミカちゃん死んだんだって…噂してて…。 ミカ   えー、ひどいな、…でも小学生の頃にありがちなウワサだよね、あの子が死んだー、とか…、でも、そうか、ヒトミちゃんは未来が見えていたんだもんね、そんなウワサを信じちゃっても仕方ないか…。 ヒトミ  でも、生きててくれて嬉しい。こうしてまた会えて、嬉しい。 ミカ   …私もだよ、ヒトミちゃん。 レイ   よかったね、ヒトミ。 ヒトミ  レイちゃん。ありがとう。 ミカ   ヒトミちゃん、この人は…? ヒトミ  あ、この子は友達のレイちゃん。 レイ   はじめまして、ヒトミに危ないところ助けてもらって、それ以来、友達やらせてもらってます! ミカ   そうなんだ。私もよく助けてもらってた。よろしくね。 ヒトミ  あれ?そういえばあの二人は? レイ   ああ、何か忙しいみたいで帰ったみたい。でね、ショウコちゃんがこれ渡しておいてって。 ヒトミ  …手紙? ―ヒトミ、手紙を開く ―ショウコ、スポットに浮かび上がる ショウコ ヒトミちゃんへ。また伝え忘れるといけないので手紙を書きました。あなたの友達のミカちゃんには、かつてカオリがくっついていて、そのせいで一時期、彼女の未来が見えなくなったようです。でも、カオリってあんな性格だから途中で飽きちゃったみたい。今はもう大丈夫なんで、まっくらになることはないはずです。そうそう、あなたの能力って、未来の不幸を見る力だと思っているようだけれど、本当は相手の人生の分岐点を見る力なんだよ。その力のせいでつらいと感じたこともあっただろうけれど、あなたに未来を変えてもらった人はみんな幸せにすごしているから、自信を持ってください。それじゃ、またどこかで。追伸、レイちゃんにサラダ味がいいとお伝えください。 ―ショウコはけて照明戻る。 ヒトミ  サラダ味? レイ   ねぇ、何が書いてあったの? ヒトミ  あ、うん。何かいろいろ…、それとサラダ味?のこと。 ミカ   サラダ味?? レイ   あー、はいはい。分かりました。 ヒトミ  何のこと? レイ   ほら、さっきオカルト記者を追い払ったときにさ、買ってあげるって約束したのよ、うまい棒。 ヒトミ  うまい棒!? レイ   十本!! ヒトミ  え?ちょっと待って、それであの記者救われたの? レイ   やっすい命だよねー。 ミカ   ねぇ、何の話してるの? レイ   うまい棒の話。 ミカ   うまい棒の話?? ヒトミ  あ、いや、うん。今日ちょっと色々あってさ。 ミカ   えー、それでうまい棒?なんだろ、すごく聞きたい。 レイ   それじゃどこかでお茶しながら話そうか? ヒトミ  うん、ミカちゃんと話したいこともいっぱいあるし。 ミカ   そうだね、それじゃどこにする? レイ   そういえば、この近くにボードゲームカフェってのがあるみたいよ。 ミカ   うわー、行ったことあるー。 レイ   もしかして常連? ミカ   ひさえさんほどではないけれど。 レイ   え?ひさえさん知ってるんだ。 ヒトミ  え?誰?ひさえさんって誰? ミカ   有名人だもん。 レイ   確かに。よーし、じゃあ行こっか。 ミカ   うん。 ヒトミ  ねぇ、ひさえさんって誰―? ―三人はけて (幕)